ユニバーサルツーリズムの推進に取り組む全国の中小旅行会社や宿泊施設、運輸事業者らで組織するバリアフリー旅行ネットワーク(東京都渋谷区)は10日、バリアフリー旅行研修会を都内で開催した。
はじめに、同ネットのメンバーで、15年以上前からバリアフリーを含むユニバーサルデザイン(UD)に取り組んでいる富士レークホテル(山梨県富士河口湖町)の井出泰済社長が「バリアフリー旅行事業の“高収益化実現”について」と題して講演した。
同ホテルは1983年から障害者雇用、1999年に初のUDルーム開設を実現するなど、先進的な対応を行ってきた。しかし、当初は収益が伴わず、厳しい時期が続いたという。
2011年に内閣府からUD推進功労者表彰を受けたことを契機に全国的に同ホテルの取り組みが知られるようになり、収益が向上。年間稼働率もUD化した23室の方が通常の部屋よりも高くなった。
当初は障害者向けのバリアフリーを目的に施設整備を進めていた同ホテル。しかし、バリアがない広々とした部屋や施設は、障害者だけではなく妊婦や小さな子連れ家族、外国人にも好評。客数も順調に伸び、収益も上がってきたことを紹介した。
続いて、同ネットの平森良典代表理事(昭和旅行社〈広島〉社長)が「ユニバーサルツーリズムの市場とその取り組み事例」と題して講演。宮島(広島県)や平泉(岩手県)、八重山諸島(沖縄県)でのバリアフリー旅行の状況を紹介しながら、課題などを解説した。
この中で、旅行会社が客に代わって宿泊施設や観光地、バスなどの情報を積極的に集め、施設なども写真やコメントといった情報の「見える化」が必要と指摘した。
平森氏は「障害者にとって1回の旅行が最大のリハビリ。障害者の外出機会の促進が健康増進につながり、観光地の地域発展にもつながる」と述べ、バリアフリー旅行を含めたユニバーサルツーリズムの重要性を強調した。
講演する井出氏