ブッキング・ドットコム・ジャパン(東京都渋谷区)は5日、「2025年旅行トレンド予測発表会」を東京の都道府県会館で開いた。同社の日本・韓国地区担当リージョナル・マネージャー、ルイス・ロドリゲス氏が発表したほか、見識者や地域活性化に取り組むゲストを交えたパネルディスカッションを実施。同社が予測する未来に向け、今後地方が取り組むべきことについて意見交換が行われた。
ロドリゲス氏は各国の利用者に行った調査から見えてきた訪日旅行のトレンドについて発表。訪日観光客は台湾、韓国、米国、オーストラリア、中国、香港などが多く、近年は三大都市圏に限らず地方の魅力を発見しようとする動きが顕著で、今年の年末に向けては北海道のニセコや長野県の野沢温泉、白馬などが多数検索されているほか、岡山や松山、由布院などこれまで訪日客があまり関心を示さなかった場所も注目されていると説明。
地方滞在への関心が高まっている現状について、「『自分を変えたい』『旅行先の地域とつながりたい』という旅行者の意欲が見られる」とロドリゲス氏。世界的な旅行の最新トレンドとして、(1)個の欲求を満たすAI活用の旅(2)多世代で紡ぐ心に刻む旅(3)長寿を得るリトリートな旅(4)シニアの枠を超えてスリル満点な冒険への旅―の四つを紹介した。
同社が提供する「AIトリップ・プランナー」でパーソナライズされた旅程作成が可能になったほか、アジア太平洋地域の旅行者に多く見られる多世代での家族旅行、心身の健康を意識した滞在、刺激的な老後を過ごしたいと考えるシニア層の増加といったこれらのトレンドを踏まえ、今後特に人気が集まると予想される都市のうち日本からは沖縄県那覇市を挙げた。
ロドリゲス氏
続いて、観光立国実現に向けて国内外の観光市場調査や施策立案支援などを手掛ける三菱総合研究所主席研究員・宮崎俊哉氏が登壇。地方でのインバウンド増加が見込まれる中、各地域が意識するべきことについて説明した。
宮崎氏は冒頭、「高付加価値旅行(ラグジュアリーツーリズム)」のエリアづくりを地方部で推進する取り組みを紹介。OTAが訪日客を地方送客した後、その地域内で消費された金が地元の事業者に漏れなく還元され、さらに地元金融機関を通じて再投資につながる―といった仕組みづくりが重要だと指摘。それを図る指標として「域内調達率」も紹介した。
後半はロドリゲス氏、宮崎氏に加え、野沢温泉の活性化に取り組む野沢温泉企画の八尾良太郎氏、ホテルグランコンソルト那覇の総支配人・後藤理恵氏、元フジテレビ解説委員のジャーナリスト・安倍宏行氏を招き、パネルディスカッションを実施。八尾氏や後藤氏からは、AIによる旅先提案や地方送客に期待の声が聞かれた一方、それらの活用支援やオーバーツーリズム対策などが課題との意見が挙がった。
安倍氏は、「観光だけで観光立国になることは不可能。地方に観光資源があるからこそ、新たなビジネスチャンスがある。そこに地域が気付かないから、地元金融機関も投資をせずに悪循環に陥っていく。視点を変えて地方活性化を再定義する必要があり、2025年はそういうタイミングだ」と総括した。
宮崎氏