ブッキング・ドットコム・ジャパン(東京都渋谷区)は4月19日、LGBTQ+の宿泊者受け入れに向けたパートナー宿泊施設向け教育プログラム「Travel Proudプログラム」の発表会を東京都内で開いた。プログラムの概要説明に加え、登壇者ゲストにLGBTQ+当事者として世界で活躍する著名人など3氏を招きパネルトークを実施。LGBTQ+当事者が国内の宿泊施設に求めることや、宿泊施設がプログラムを導入するメリットなどについて意見交換が行われた。
Travel Proudは、LGBTQ+の宿泊者に対する接客時のホスピタリティや注意点、配慮することなどを無料で学ぶことができるオンライン教育プログラム。2021年から英語圏を中心に順次提供が開始され、今年3月からは日本を含むアジア圏にも導入。世界中からのインバウンド需要が高く、国内の同社ユーザーも多いことから、今回日本語版の提供が開始されることとなった。内容はLGBTQ+について理解を深める基本の講義と実践型のケース課題を合わせた2部構成になっており、今回発表された日本語版は合計約2時間の動画を視聴する形式となっている。
修了後はトレーニング内容がまとめられたマニュアル「Travel Proud Customer Toolkit」を受け取れるほか、すべての旅行者を必ず歓迎するという誓約書を提出すると「Proud Certified」の認定も受けられる。認定を取得した施設は、同社サイト内の検索結果に表示される施設ページに認定バッジを表示できる。同社によるとLGBTQ+の旅行者はこうした施設へのロイヤルティが高い傾向があり、認定の取得は宿泊施設にもメリットがあるという。
発表会の前半は、アジア太平洋地域担当マネージング・ディレクター兼副社長のローラ・ホールズワース氏が登壇。「LGBTQ+の旅行者のうち8割が、旅行先を決定するにあたり安全性とウェルビーイングを考慮する必要があると回答しており、同じく62%が旅行中の服装やメイクに不自由さを感じている」と説明。今回のプログラム導入により、あらゆる人々が日本で安心して滞在できるよう努めていくことを強調した。
後半は、ドラァグクイーンの歌手・俳優として活躍するドリアン・ロロブリジーダ氏、LGBTQ+当事者でトラベルライター・クリエイターのカラム・マクスウィガン氏、Travel Proudo認定済のホテル「all day place shibuya」を運営する飯島亮氏を招き、パネルトークを実施。
LGBTQ+当事者として宿泊先に求めるものについて、ドリアン氏は「日本のホテルや旅館では今でも男女を明確に区別するような空間づくりや色使いが見受けられる。小さなことかもしれないが、こうした配慮があるかないかで得られる安心感は大きく異なってくる。まずはプログラムを通してLGBTQ+について知っていただいて、ご自身の宿泊施設ではどこまで配慮できているかを考えるきっかけとしていただきたい」と語った。
カラム氏も「日本にはほかのLGBTQ+の人たちと接することができる場所が増えてきているが、いまだ広く認知されておらず、探すのに苦労することが多い」と情報のアクセスに関する不安を述べ、「認定を受けた施設は安心感がある。プログラムの活用によってこうした施設が増え、課題が解消されるとうれしい」と話した。
運営するホテルでプログラムの認定をすでに取得した飯島氏は、受講したきっかけについて「性的マイノリティの人々にとってフレンドリーな施設だと告知できる点」を挙げ、「以前はLGBTQ+を知る機会がなかったが、プログラムの受講によってさらに意識が高まったと思う」と受講の意義を強調した。
ドリアン氏は「日本は今までなかったものを輸入して新しい価値を生み出すのが得意な国。誰かにとって居心地がよい空間が、誰かにとって居心地が悪くなってしまわないようにすることが大切」とし、プログラムをうまく活用して性的マイノリティであっても安心できる宿づくりへの希望を語った。
飯島氏(中央左)、ドリアン氏(中央)、カラム氏(中央右)
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