日本公庫調査 深刻な人手不足背景に
深刻な人手不足を背景に従業員の賃金水準を引き上げる企業が増えている。日本政策金融公庫(日本公庫)がこのほど行ったホテル・旅館など生活衛生関係営業への調査では、賃金水準が1年前と比べて「上昇」と回答した企業割合が正社員、非正社員ともに前年調査を上回るとともに、非正社員では調査開始以来、最も高い数値となった。ホテル・旅館は正社員で45.5%、非正社員で66.3%が「上昇」と答えている。
調査は昨年12月中旬、生活衛生関係営業3290企業に訪問面接方式で実施。このうち3142企業が回答した。ホテル・旅館は180企業が回答した。
1年前と比べた正社員の賃金水準について、「上昇」と回答した企業割合は、全業種計で34.4%と、前年調査(25.9%)を8.5ポイント上回った。このほか「不変」が同4.4ポイント減の62.5%、「低下」が同4.1ポイント減の3.1%。
「上昇」の割合は16年から26.0%、28.8%、35.8%、37.2%と増加の一途をたどっていたが、コロナ禍となった20年に22.2%と大きく減少。しかし、その後は再び増加を続けている。
9の業種別では、ホテル・旅館が45.5%。2位の映画館(40.7%)を抑えて業種別で最も高くなっている。ホテル・旅館はこのほか「不変」が52.6%、「低下」が1.9%。
一方、非正社員の1年前と比べた賃金水準は、全業種計で「上昇」が49.4%と、前年調査(37.7%)比11.7ポイント増加。15年の調査開始以来、最も高い数値となった。
業種別ではホテル・旅館が66.3%と、ここでも映画館(61.0%)を抑えて最も高くなった。ホテル・旅館はこのほか、「不変」が33.7%、「低下」が0%。
ホテル・旅館の今後1年間の見通しを聞くと、「引き上げ予定」が正社員で50.6%、非正社員で47.9%と、ともにほぼ半数を占める。
同調査によると、22年に従業員が減少した企業割合はホテル・旅館が24.6%と、9業種別で最高。従業員を「不足」とする割合も65.6%と、最も高くなっている。
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日本公庫の中小企業に対する別の調査でも給与水準を引き上げた企業割合が増加している。昨年12月中旬、同公庫取引先の1万3266社に行った調査では(有効回答数5473社)、正社員の給与水準を「上昇」とした企業割合が53.1%と、前年調査(41.1%)比12.0ポイント増加するとともに、3年ぶりに50%を上回った。非製造業10業種では宿泊・飲食サービス業が47.2%と半数近くに上る。
宿泊・飲食サービス業における正社員の過不足感は、「不足」が72.0%と、建設業(73.3%)に次ぐ高さ。非正社員は74.3%と、2位の小売業(44.0%)を大きく引き離してトップとなっている。