地域活性化の起爆剤
2022年は、世界遺産条約が国連教育科学文化機関(ユネスコ)で採択されてちょうど50年、半世紀の節目の年だった。
世界遺産は千件超、日本でも25件が登録されている。登録されることによって注目度は一気に高まり、多くの観光客が足を運ぶ。地域経済活性化の大きな起爆剤ともなり、登録に熱心な自治体や経済界は少なくない。
一方で、観光客が急増することで自然破壊やごみの問題など弊害もでている。登録後の維持管理体制や開発と景観の両立をどう図るかといった問題も表面化している。
最近、話題となったのが22年11月の「風流踊り」の無形文化遺産登録だ。日本からの無形文化遺産登録は20年の「伝統建築工匠の技」以来2年ぶりとなる。09年に単独で登録された「チャッキラコ」(神奈川県三浦市)に加える形でひとまとめにして登録されたので、国内登録件数は22件のままで変わらない。
世界遺産も無形文化遺産もひっくるめて「世界遺産」と理解されがちだが、正確ではない。同じユネスコの活動だが、登録の根拠となる条約が異なるのだ。
世界遺産は、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(1972年採択、75年発効)に基づき、普遍的な価値のある人類全体の財産として登録、保護される有形遺産で、文化遺産、自然遺産、複合遺産の三つがある。現在、日本では文化遺産20件、自然遺産5件の計25件が世界遺産となっている。複合遺産はまだない。
無形文化遺産は無形文化遺産の保護に関する条約(2003年採択、06年発効)に基づき、登録、保護される国の芸能や祭礼、伝統工芸技術などが対象。
世界遺産と無形文化遺産はきちんと区別して使いたいものだ。
今後の登録の動きが気になるところだが、世界遺産は「古都鎌倉の寺院・寺社ほか」(神奈川県)、「彦根城」(滋賀県)、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」(奈良県)、「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」(新潟県)などがある。
一方、無形文化遺産の次の候補は日本酒や焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」。
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