三重県とエイチ・アイ・エス(HIS)は10月31日、農林水産業や食関連など産業の自律的、持続的な発展や地域の活性化を目的にした「食の海外展開に係る戦略的連携協定」を締結した。茶やミカンなど三重県の農産品をアゼルバイジャンなど3カ国に輸出し、ビジネスを展開する。
HISは商社事業を本格展開し、5年間で世界30カ国に10品目程度の食材輸出を行い、輸出額は約9億、販売国は10~15倍を目指す。三重県は、食材の知名度を生かした訪日客の誘客拡大に取り組む。
両者は、主な取り組みとして(1)グローバル市場における戦略商材の市場開拓(2)戦略商材の販売強化につながるよう、訪日外国人旅行者が観光資源とともに産地を認知・体験できるツアーの実施(3)戦略商材の輸出販売増につながるよう、商材ごとの個性に応じた販売強化(4)戦略商材のブランド向上―を行う。
戦略商材としては、茶とミカンを展開。茶は、抹茶チョコレートの原料としての輸出、現地加工、第3国への転送、現地でのリパックによる販売、日本国内加工事業者による輸出向け加工商材の開発などを行う。具体的には、アゼルバイジャンのシリン社では抹茶チョコレートを同国で製造し、ロシアを含むCIS、欧州、中東地域への転送販売、ハーバフローラ社では伊勢の茶をリパックした日本茶の商品販売を行う予定だ。
ミカンは、海外の個人や法人向けにグローバルオーナーを公募し、収穫したミカンや加工品を楽しむ「みかんの木グローバルオーナー制度」の実施を計画している。
10月31日に東京都港区のJETRO本部で開催された記者会見では、HISの澤田秀雄会長兼社長が「日本の素晴らしい食材を海外に輸出し、新しいビジネス、ブランドを作り上げたい」と述べた。三重県の鈴木英敬知事は「良い食材の販路を世界に求めても、生産者個々では限界がある。HISとともに伊勢茶やミカンなどを発信し、1人でも多くの世界の人々に知ってもらえれば」と話した。また、世界でも過度な産地間競争を行うのではなく、連携して日本の食のポジションを確立する必要性を訴えた。
今後、HISは世界69カ国268店舗を生かし、新たな輸出モデルを作るほか、国内での展開も検討する。三重県は、農産品体験をテーマとした訪日旅行の造成に取り組む。
握手をする澤田会長兼社長(左)と鈴木知事