中国の春節休暇(1月27日~2月2日)には、多く中国人旅行者が日本を訪れたが、その消費行動は変化している。観光庁がこのほど発表した訪日外国人消費動向調査の結果(速報)によると、中国人旅行者の2016年の消費額は、訪日外国人全体の約4割を占めたが、1人当たりの旅行支出は前年を下回り、円高の影響や「爆買い」の沈静化が顕著だった。ただ、その旅行支出は他の国・地域と比べて依然高く、特に買い物代は突出して高い。
16年の中国人訪日旅行者数は、前年比27・6%増の637万3千人だった。その消費額は前年比4・1%増の1兆4754億円に上る。訪日外国人全体の旅行消費額約3兆7千億円の39・4%を占めている。
訪日中国人旅行者1人当たりの旅行支出は、23万1504円で同18・4%の減少だった。前年の15年には、「爆買い」として旺盛な買い物行動が注目されたが、旅行支出のうち買い物代は同24・1%減の12万2895円で、前年からは約4万円も減少した。
観光庁は、中国人旅行者の買い物代の減少要因として、為替レートの変動のほか、中国政府による携行品輸入の関税引き上げ(16年4月)と、日本製品をインターネットで購入する越境EC(電子商取引)の利用を挙げている。
16年11月に観光庁が実施した訪日中国人旅行者406人に対するアンケート調査の結果では、全体の44・6%が帰国時の関税支払いを理由に買い物支出を抑えたと回答した。買い物を控えた品目のトップは電気製品だった。また、越境ECの利用を理由に日本滞在中の買い物を抑えた人も22・4%に上った。
土産品の購入品目を見ると、電気製品を購入した人の割合は15年が40・7%に上ったが、直近の16年10~12月期は27・8%に低下した。一方で、化粧品・香水、菓子類、医薬品・健康グッズ・トイレタリーの購入率は、6、7割と引き続き高くなっている。
前年から減少したとは言え、中国人旅行者の1人当たり旅行支出は、主要訪日市場20カ国・地域の中で豪州の24万6866円に次いで2番目に高い。買い物代は主要市場で最高で2番目に高いロシアの6万4892円の2倍近い。また、減少率も円高基調だった為替レートの影響が大きい。観光庁の試算では、現地通貨ベースで見ると旅行支出の下げ幅は1・6%、買い物代の下げ幅は8・5%にとどまる。
買い物代以外の支出は、宿泊料金が同12・0%減の4万4126円、飲食費が同8・0%減の3万8943円。平均宿泊日数が同0・9泊減の11・8泊となる中、ともに前年から減少したが、現地通貨ベースでは宿泊料金が同6・2%増、飲食費が同11・0%増で、必ずしも旅行支出への意欲は減退していない。
消費行動の変化の背景には、個人旅行、リピーターの増加も関係しているとみられる。16年10~12月期では、個人旅行の割合が70・2%で、15年の年間値に比べて13・0ポイント増加した。観光目的の旅行者の訪日回数も2回目以上の割合が37・2%で、15年から9・7ポイント増加した。
中国人旅行者の動向について日本政府観光局(JNTO)の松山良一理事長は、1月26日の記者懇談会で、個人旅行・リピーター層が多い沿海部、団体旅行・初訪日層が多い内陸部、ともに旅行者数の増加を見込むとともに、「電気製品などの爆買いは収まってきたが、化粧品、薬、菓子は土産品として人気だ。一方で今後はモノからコトの消費に移っていく。食事をすることや、浴衣を着て街を散策するなどの体験型への需要が高まっている」と指摘した。