全旅連青年部、日本旅館協会と上海本社で開発会議実施
昨年12月の「架空宿泊在庫販売問題」をあらためて謝罪
旅館業界とシートリップ幹部のミーティング
全旅連青年部と日本旅館協会は6月25、26日の2日間、中国最大手のOTA、シートリップの上海本社を訪れ、同社幹部やシステム開発責任者らと新たな「日本旅館販売システム」開発に向けたミーティングを開いた。
日本旅館協会からは副会長の永山久徳氏(下電ホテルグループ)が出席。
全旅連青年部からは、部長の鈴木治彦氏(奥津荘)、政策担当副部長の星永重氏(藤龍館)、総務広報委員会委員長の中西敏之氏(南禅寺八千代)、流通・インバウンド委員会委員の河本孟徳氏(嵐山辦慶)が出席した。
シートリップ側は、宿泊予約事業を統括する首席商務官(CBO)の周栄氏、東アジア地区の宿泊予約事業を統括する総経理(ゼネラルマネージャー)の劉楊氏、シートリップグループ日本代表の蘇俊達氏、シートリップ・エアチケッティング・ジャパン(トリップドットコム)ゼネラルマネージャーの吉原聖豪氏らが出席。2日目のミーティングでは、システム開発部門、マーケティング部門などから各担当チームが出席し、細かい打ち合わせを行った。
初日の会議の冒頭、永山氏が「日本の旅館業界との直接ミーティングの場を設けていただいたことに感謝する」と謝意を表明。
これに対して、周氏は「シートリップは国際化を加速しており、世界各国に進出している。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄の7拠点を展開している日本は成長率が大きい最重要マーケットの一つだが、本社と日本オフィスとのコミュニケーション不足などが原因で皆さまにご迷惑をおかけしたことをお詫びする」と述べた。昨年12月に日本で発覚し、社会問題化した、シートリップ運営の旅行サイト・トリップドットコムの「架空宿泊在庫販売問題」で生じた混乱について謝罪した。
その上で「日本旅館のサービスレベルの高さは世界的に有名で、中国人旅行者にも旅館の人気は高い。皆さまからのアドバイスを細かく取り入れて、シートリップがグローバル展開するオンライン・トラベル・プラットフォームで、日本旅館を世界で予約販売する新しい仕組みを構築したい。日本旅館は特に食事の取り扱いがホテルと大きく異なるが、旅館側の要望に沿った形で正確な情報を発信、販売できるようにする」と約束した。
鈴木氏は「全旅連と日本旅館協会は、日本の宿泊業界、観光業界の発展のために共に活動している。今回のミーティングを機に、日本の旅館文化、商習慣に関する理解をさらに深めていただき、日本旅館を中国内だけでなく世界に販売する仕組みを共同で作り上げてほしい」と述べ、協業に当たっては情報提供を惜しまない姿勢を示した。
また、永山氏は「昨年12月の事件では、蘇日本代表の迅速な対応により大きな混乱は避けることができた。旅館業界が問題視したのは特に日本のOTAユーザーにはなじみのない『リクエスト予約(オンリクエスト)』という方式。客室が即時予約されていないことをユーザーに分かりやすく表示する改善も必ず加えてほしい。食事以外にも旅館独特のサービスがあり、それらが世界のユーザーに誤解なく伝えられるシステム、インターフェースの構築をお願いしたい」と要望した。
周氏は「シートリップ(Ctrip)のCはカスタマーのCも表している。お客さまに喜んで、安心して使っていただけるサービスを提供することを常に心掛けている。目指しているところは、旅館業界の皆さまと同じだと思う。日中の文化の違いや社内のコミュニケーション不足などがおそらく原因で、皆さまにご迷惑をおかけしたが、お客さまの満足度向上という共通の目的のため、日本の旅館業界とのウィンウィン関係を築かせていただきたい」と応じた。
新旅館予約システム稼働の時期について周氏は、「9月末をめどにバージョン1をリリースし、随時改善を加えていきたい」と言及。露出規模については「最終的には、中国内向けサイトのシートリップ、海外向けサイトのトリップドットコムだけでなく、シートリップ傘下の英国メタサーチ『スカイスキャナー』、同傘下のインド最大手OTA『メイクマイトリップ』でも、日本旅館、温泉旅館の正しい情報発信を行う」と話した。
意見交換に臨んだ全旅連青年部、日本旅館協会、シートリップの主なメンバー。(写真右から)蘇、鈴木、周、永山、劉の各氏
キャンセル料やリクエスト予約、表示や通知改善
約2万人が働くシートリップの上海本社
全旅連青年部と日本旅館協会の代表団がシートリップの上海本社を訪れ、システム開発、マーケティングなど各部門の担当チームと6月25日に行ったミーティングでは、新たな「日本旅館販売システム」の9月末稼働に向けて具体的な意見交換が行われた。
システム関連では、(1)子供料金を大人料金のパーセンテージで設定、表示できるようにすること(2)宿泊キャンセル料を時期によって段階的に設定、表示できるようにすること(3)リクエスト予約となった場合、予約が完了していないこと、および予約が確定しない限りキャンセル料は発生しないことを、ユーザーに対して分かりやすく表示、通知すること―などを話し合って決めた。
マーケティング関連では、(1)より多くの中国人に日本の温泉地を知ってもらうため、温泉旅館での宿泊を目的とする観光ルートを紹介する(2)各温泉旅館の詳細情報を分かりやすく表示、紹介することで販売実績を高める―などを目標に掲げた。
具体的には、中国国内向け旅行予約サイトのシートリップと中国国外向けのグローバル旅行予約サイトのトリップドットコムで、2カ月ごとにテーマ別販売キャンペーンを行うことなどを決めた。「海・湖に近い絶景の温泉地」「散策が楽しい温泉地」「カニ・和牛が食べられる温泉地」「雪が見える温泉地」をテーマに、サイト上のバナー広告などを使って誘客キャンペーンを実施する。
本社内のオペレーションセンター
【江口英一】