中央道・笹子トンネル事故、観光への影響じわり


 中央自動車道・笹子トンネルの事故発生から1カ月。都内と甲信地方を結ぶ大動脈が突然断絶するという異常事態に、沿線観光地の関係者らは観光客減少を危惧し、困惑を深めている。自動車から鉄道へのシフトも顕在化するなど人の流れも変わり、影響は各方面に広がっている。

 山梨県笛吹市の石和温泉は例年、中央道を利用して来る観光客でにぎわう。都内から来る場合、同トンネルを抜けた直後にある勝沼インターチェンジ(IC)か一宮御坂ICを利用するのが一般的だ。しかし、高速道路が不通のため、迂回路の国道20号が連日、渋滞に見舞われている。

 同市や石和温泉観光協会、市内の一部旅館では、ホームページで迂回路の案内を掲示し、少しでも客足の減少に歯止めをかけようとしている。しかし、決め手に欠けるのが実情だ。ホテルふじ(同市)の河野仁主任は「事故直後は自家用車利用の個人客を中心にキャンセルがあった。現在は迂回路の案内を徹底しており、キャンセルの動きは落ち着いてきたが、年始以降の予約数がどうなるか心配だ」と不安を隠さない。

 新宿〜甲府間などで高速バスを運行する京王バス東や山梨交通は、運休はないものの大幅な遅延が想定されるとして、乗客に注意を呼びかけている。両社は、新宿〜甲府線で12月16〜27日、通常運賃のほぼ半額で乗車できる「年末2回回数券」を販売し、乗客のつなぎ止めを図った。

 山梨県と長野県の危機感は強い。特に、事実上高速道路の迂回路がない山梨県は、事故翌日(12月3日)と同4日、横内正明知事自らが国土交通省と中日本高速道路に対し、早期復旧を要望した。

 一方で、鉄道の利用者は急増している。JR東日本が同14日に発表した年末年始期間(12月28日〜1月6日)の指定席予約状況(12月13日現在)によると、中央線特急「スーパーあずさ」「あずさ」「かいじ」が前年同期比60%の大幅増を記録した。

 今年の年末年始の国道20号は、例年の帰省ラッシュに加え、トンネル事故の影響で激しい渋滞が予想されるため、昨年まで自家用車や高速バスを利用していた人が鉄道に流れているとみられる。

 「60%増」は、他の在来線の平均が同15%増にとどまっていることや、中央線の昨年、一昨年の状況が、それぞれ同9%増、同2%減だったことから、極めて異常な数字であることを示している。

 
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