
深刻な人手不足背景に
深刻な人手不足を背景に、従業員の給与水準を引き上げる企業が増えている。日本政策金融公庫がこのほど行った中小企業への調査で、正社員の給与水準を前年から引き上げた企業割合は75.2%と、前年調査から7.2ポイント上昇した。業種別では「宿泊・飲食サービス業」が81.0%と高くなっている。
調査は昨年12月中旬、同公庫の取引先1万3823社に行い、4976社から有効回答を得た。このうち宿泊・飲食サービス業は234社が回答した。
正社員の給与水準の前年との比較で、全業種計で「上昇」が75.2%、「ほとんど変わらない」が24.3%、「低下」が0.5%だった。前年調査との比較では、「上昇」が7.2ポイント上昇、「ほとんど変わらない」が7.1ポイント、「低下」が0.1ポイントそれぞれ低下した。
「上昇」と回答した割合はコロナ禍が深刻化した2020年に31.2%、前年比23.1ポイント減と大きく低下したが、その後は41.1%、53.1%、68.0%、75.2%と4年連続で上昇している。
「上昇」と答えた割合が多い業種(全11業種)を見ると、製造業が81.5%と最も高く、宿泊・飲食サービス業が81.0%と続いた。以下、小売業(77.6%)、運送業(水運を除く、75.8%)、倉庫業(同)の順=図1。
給与水準上昇の背景は、「最低賃金の動向」に24.9%、「物価の上昇」に24.8%、「自社の業績が改善」に17.3%、「採用が困難」に17.1%がそれぞれ回答した。
正社員の過不足感は、全業種計で「不足」が57.7%、「適正」が36.4%、「過剰」が5.9%。「不足」が前年調査から1.1ポイント低下したものの、依然高水準だ。
「不足」の割合を業種別に見ると、運送業(75.5%)、建設業(73.7%)、宿泊・飲食サービス業(71.8%)、倉庫業(70.3%)が7割台と高水準になっている。
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