国内旅行販売状況を取材班が調査
JTBの発表によると、今年の夏休み(7月15日~8月31日)に宿泊を伴う国内旅行に出かける人は前年対比4.2%減(2019年対比6.1%減)となる6800万人と見込まれる。今年初めての最高気温40度以上が静岡市で観測されるなど全国で暑さが増している中、旅行会社の夏商戦も熱を帯びてきた。主要な旅行会社に夏の国内旅行販売の状況を聞いた。
全体的な販売状況について近畿日本ツーリストは「7、8月の販売高は前年同期と比較してやや弱めで推移。宿泊費などさまざまな物価高騰の高止まり傾向により国内旅行者(日本人)の出控えの可能性あり」という。
東武トップツアーズは「先行受注は好調だったが6月下旬から急増した昨年の勢いはなく、現在、対前年95%で推移。夏季受注の波が今年は届いていない印象だ。また、先行と間際の受注の二極化がますます進んでいる」と話す。
「夏(7~9月)全体の販売は前年同時期比で約90%とあと一息」というのは日本旅行。「訪日需要の急回復に伴って、現地の稼働率も急上昇し、春以降大幅に宿泊単価を上げ、市場価格と一般ユーザーの想定価格の間にギャップが生じている状況が考えられる」とその要因を分析する。
JTBは「国内旅行は前年比100%。円安や物価高の影響がある中で、旅行日数や方面など、工夫しながら旅行をする傾向が見られる。行き先は、近場の人気が高い」という。
阪急交通社は、予約状況が前年比1.3倍と大きく伸長した。
人気の方面については「関西や東京ディズニーリゾートを含む関東、家族旅行を中心に沖縄方面の旅行が好調」とJTB。近畿日本ツーリストは「夏休みに人気の高い北海道、沖縄、東京が今年もランキング上位。伸び率ではウェブサイトの特集ページを一新した立山黒部アルペンルート商品が前年と比較して顕著に好調」と語る。
阪急交通社での人気旅行先は、1位が北陸・甲信越、2位北海道、3位近畿、4位東北、5位関東となっている。北陸・甲信越は上高地や立山黒部アルペンルートが人気だ。
日本旅行は「コロナ禍からの回復、改善が見られた東京、大阪といった都市圏旅行が昨年は大幅に需要が拡大したが、今年は地方への旅行が前年を上回り好調。インバウンド需要による客室単価上昇、物価高、混雑といった影響を受けがちな大都市圏旅行を避けて地方への分散が見られる」と話す。
連日の暑さで避暑地に向かう傾向も。「酷暑のせいか尾瀬商品の売れ行きが例年以上」と東武トップツアーズ。阪急交通社では「このところの猛暑下では都市部を離れ、涼しい信州・白馬の高原リゾートや北海道・釧路に滞在する旅が特に人気を集めている」という。
一方で、「前年に比べ、TDR(東京ディズニーリゾート)やUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のテーマパークの販売がやや低調」と近畿日本ツーリスト。TDRについては昨年の40周年の反動とも推測している。
各社が展開する旅行商品での売れ筋を見てみよう。JTBでは「夏祭りや花火を目的としたプランが、混雑が予想されるイベントで観覧席の確保ができていることから、人気となっている」。東武トップツアーズは「運行開始から1年の東武新型特急『スペーシアX』人気が持続しており、栃木商品が好調。また、「『推し活』と見られる新幹線日帰りプランの利用が顕著に増えている」という。
地震被害の北陸支援を継続
近畿日本ツーリストは「当社独自の北陸支援施策『旅で応援~とどけよう元気~』と北陸新幹線延伸の相乗効果で福井県、富山県の伸びが顕著。立山黒部アルペンルート商品や、『ねぶた祭り』『竿燈まつり』などの東北夏祭りといった目的が明確な商品が伸びている」と話す。
1月に能登半島地震が発生し、旅行にも大きく影響が及んだ北陸に対しては、各社が支援の姿勢を強めている。日本旅行は「北陸新幹線の敦賀延伸が奏功して前年を上回る集客を示しており、人気の高さが伺える。当社もJR西日本グループの一員として、『旅して応援!北陸・新潟』といった北陸応援商品などを継続して投入している」。
国内旅行キャンペーン「日本の旬 北陸」で北陸地域の魅力をテーマ別に伝えるプランを設定しているJTB。「旅行を通じて、より多くの方に現地の魅力を感じていただくことで観光による復興を応援し、北陸地域のさらなる活性化に貢献していく」と強調する。
【旅行会社取材班】