人手不足、原価高騰を解消する冷凍スイーツ パティスリーアプラノス オーナーシェフパティシエ 朝田普平氏に聞く


パティスリーアプラノス オーナーシェフパティシエ 朝田普平氏

コスパも良く品質も向上 経営課題を解決できる

 慢性的な人手不足、インバウンド等による急激な需要回復に伴い、労働環境の改善は待ったなしの経営課題の一つとなっている。新高輪プリンスホテルやパークハイアット東京、浦和ロイヤルパインズホテルでパティシエを務め、数多くの賞を受賞している「パティスリーアプラノス」(さいたま市)オーナーシェフの朝田晋平さん(60)に経営課題を含めた冷凍スイーツの魅力を聞いた。

 ――スイーツはパティシエのこだわりが強く出る商品だと思いますが、冷凍スイーツに対してはどう認識していますか。

 「このお店を始める前は新高輪プリンスホテルやパークハイアット東京、浦和ロイヤルパインズホテルでパティシエやペストリーシェフを務めてきました。ホテルでは多岐にわたった仕事をしなくてはいけません。ホテル内ショップのスイーツだけでなく、レストランのデザートから宴会や婚礼、パーティーで出すスイーツなども作らなければならず、限られた人数と時間の中で全て賄うというのは非常に厳しいです」

 「特に最近は働き方改革などもあり、時間が制約される中で全てを手作りでやるのは難しくなりつつあります。そういう中でうまく冷凍スイーツを活用し、対応することはとてもいいことだと思います」

 ――食したことはありますか。

 「ホテル時代ですが、メーカーさんからご提案があり、試食もしました。その時は私がイメージする、求めるクオリティには達していないという印象をもちました。その後、味の素冷凍食品さんとお付き合いさせていただき、かなり食べていますが、昔と違うな、というのが正直なところです」

 「味の素冷凍食品さんの努力はもちろん、冷凍技術の進歩、材料そのもののレベルアップを感じます。うちのスイーツと比べてどちらがおいしいかといったらまだうちの方ですが(笑い)。ただ、冷凍スイーツはいけるよね、っていうのが正直な感想です。うまく使っていけばいいんじゃないかな」

 「冷凍スイーツのクオリティは確実に上がっています。フレック スペシャリテのアイテムの中にはそのまま出していいものもありますし、われわれプロがもうひと手間加えることによってさらにクオリティを上げることもできます。ラインナップも豊富なので、さまざまなニーズに対応できます。創作の楽しみもあると思いますね」

 ――コストパフォーマンスは。

 「食材や仕入れのコストだけを考えると、自分たちで作った方が安いです。しかし、人件費や水道費、家賃などがかかり、あとロスも出ます。ごみ一つ捨てるにもお金がかかる。そういうことをトータルで考えると、冷凍スイーツは人件費や材料費などの抑制効果もあり、コスパは決して悪くはないと思います。小分け提供でロスなく必要な分だけ提供できるのも、衛生対策面でいいですね」

 ――プロの中には冷凍スイーツに対して冷ややかに見ている人もいるのでは。

 「いないとはいえませんが、私はそうではないですね。冷凍スイーツでいいよというお客さまもいらっしゃるでしょうし、オリジナルとは別のブランドで提供することもありかなと思います。お店がどう判断するかですね」

 ――一般の人にお店の商品と冷凍スイーツの違いは分かりますか。

 「プロはともかく、味だけで言ったら難しいと思いますね。また、冷凍スイーツを提供する際、いかにそう見せないかというアレンジが必要だと思います。お皿との組み合わせで形状やカットサイズを変え、バリエーションを増やすとか、見栄えのいい並べ方も工夫、トッピングの見せ方でも印象は変わります。ひと手間、ふた手間かけることで冷凍スイーツの可能性は広がります」

 「例えば、冷凍ケーキとステンシルシート(絵や文字などの柄を切りぬいた型紙)を使えば、急なバースデーケーキなどにも対応できます」

 ――朝田さんから見て、ここを改良すればもっと良くなる、という点を挙げるとすれば。

 「お客さまは素材や材料に対して、僕らが思っている以上に情報をお持ちです。ネット上でいろんなことを調べられますからね。なので、産地や銘柄にこだわった製品を作ってみてもいい。例えばイチゴのムースでもあまおうのピューレを前面に出すとか。可能性は大です。あとはロットの問題ですね」

 ――飲食店はもちろん、観光業界も深刻な人手不足で、かつ原価も上がってきています。こうした課題解決に冷凍スイーツは効果を発揮すると思いますか。

 「あり得ますね。導入の一番のメリットです。ただ、冷凍スイーツを導入したからスタッフを5人から3人に減らすというのはどうでしょうか。違うと思いますね。冷凍スイーツを使うことによって時間が生まれ、余裕も出てきます。それをどう生かすかということです。創作の時間に当てたり、スタッフの教育に使うなどですね。人を減らすんじゃなくて、人を定着させるっていうことにも、僕はうまく使っていけるんじゃないかなと思っています」

 「スイーツは全ての料理を締めくくる、顧客満足度に影響を及ぼす重要な役割を果たします」

 「お客さまが求める高いクオリティと原材料高騰におけるコストのバランスを取りながら、全てのラインナップではなく、一部に冷凍スイーツを上手に活用することで、お客さまの期待を上回る価値提供を実現し、ホテルの経営課題を解決できると思います。そうすることでホテル、並びにスイーツ業界が盛り上がってくれれば良いと思ってます」

さいたま市武蔵浦和にあるパティスリーアプラノス

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