従業員の待遇改善に腐心
新型コロナの感染症法上の5類移行、政府による水際対策緩和などにより、国内の観光・温泉地はコロナ禍以前の状況を取り戻しつつある。しかし深刻化する人手不足など、受け入れ側の態勢が十分に整っているとは言い難い。全国の主な旅館・ホテル経営者に自館の人手不足対策、現場で注力、再開した取り組み、その他、国や地方の行政に訴えたいことを聞いた。
人手不足への対策
給与など従業員の待遇改善、サービス体制の見直し、DX化に各施設が腐心している。
「人手不足は昨年夏ごろから大いに感じている。対策としては、基本給のベースアップ、外国人の募集などを行い、まだ外国人は来ていないが6月ごろには全て募集した人員がそろう予定」(北海道)。
「人手は非常に不足している。社員の待遇改善を段階的に行っている」(東北)。
「依然として人手不足は深刻で、外国人の雇用に頼っている。間もなく外国人も頼めなくなるのだろうか」(関東)。
「コロナで高齢の清掃関係の従業員が以前より働けなくなり、補充ができていない。毎日満室とはならないので毎回ではないが、定期的に稼働率を落として(スタッフの)スケジュールを組んでいる」(関東)。
「(人手不足を)かなり感じている。日本人、外国人などできる限りのあらゆる方法で募集している。週末短時間パートの仕組みも活用。DX化ができるところは導入など」(関東)。
「足元では人手は足りているが、この後急激に人手不足になりそうで怖い。近隣の旅館では、スタッフもさることながら事業承継が大きな問題になりつつある。そして、和食の若い料理人がほぼ集まらなくなってしまった」(関東)。
「調理師と幹部(支配人クラス)の不足は感じている。一般の求人のほか、社員紹介制度の利用を推奨している」(関東)。
「慢性的な不足はある。特に調理師など。そのため高度な調理よりも郷土料理を中心とした食事提供にしている。また外国人スタッフと学生バイトを確保し、休前日などは対応している」(甲信越)。
「団体・宴会の受注を止め、ビュッフェに切り替えたので、人は充足している状況。この体制を維持、継続していくため、従業員満足度を重視し、年間公休数を増やし、運営を始めた。労働生産性向上の専門コンサルを入れ、勤怠管理の制度設計をし直し、他業種に引けを取らない(週休2日と同数である)年間公休105日とした」(甲信越)。
「(人手不足を)大いに感じている。特に5類移行されて経済が動き始めてからの離職(転職)が多くなってきた。マルチタスクや外国人雇用を強化し、人材を補強中」(東海)。
「大きな悩みの一つ。2024年4月入社の採用活動が例年並みに成果を上げられるかどうかを非常に心配している。人事制度を見直し、より働き手に沿ったものを急きょ策定している。退職金制度も変更を検討中。海外からの人材募集ルートの幅を広げることも実施予定」(関西)。
「どの産業も求職率が上がっているため、他の産業への流失も進んでいる。給与の見直しや時給アップ、休館日を増やすなどに取り組んでいる」(九州)。
注力、再開したい取り組み
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