JTBのビジョンを世の中に示す
――23年度のサステナビリティに関する取り組みについて教えてほしい。
「JTBグループにおけるサステナビリティをどう経営の基盤に置くのかという取り組みに力を入れた。特に、サステナビリティの理念を全社員が理解すれば自然と取り組みが進むので、サステナビリティを判断のベースに置いて活動するという意識改革を戦略の一番上に掲げた。さらに企業のサステナビリティに対する姿勢と具体的な目標やKPIをしっかり外部に公表して、そのことに対して外部からフィードバックをもらい、さらにブラッシュアップすることにも力を入れた」
「サステナビリティレポートを継続して公表をしているが、まだ全ての取り組みが定量的に示せるものばかりではない。これをできる限り定性ではなくて、定量目標に変えて、外部に進捗(しんちょく)を開示していく。外部評価の一つ、『日経SDGs経営調査』ではJTBの偏差値はまだ低いが、年々改善してきており、サステナビリティの取り組みが少しずつ数値となって現れてきている。また、環境省の『エコ・ファースト企業』にも認定された」
――24年度のサステナビリティの取り組みは。
「サステナビリティというテーマは非常に高い専門性を必要とするため、サステナビリティを経営に実装するにあたり今年度から新たにサステナビリティチームを組成した。そのチームを中心としてサステナビリティに関する戦略の磨き上げと、仕組みの構築をより強化していく」
「特に優先的に取り組むテーマの一つが脱炭素だ。これは30年にスコープ1・2、50年にサプライチェーンまで含めたスコープ3においてカーボンニュートラルの状態を目指すという目標を2年前に立てている。24年度は、まずは脱炭素の目標に資するような具体的な取り組みを進める」
「次に、生物多様性や水、廃棄物などの優先課題にも取り組む。各テーマは連動しているところがあるので、サステナブルツーリズムとは具体的にどういったものか定めた上で、それを軸として他のテーマも具体化していく必要がある。また、文化や自然の資源保護、地域の魅力発信といったJTBがこれまで取り組んできたテーマもある。こういうテーマと脱炭素や生物多様性、水、廃棄物などを合わせ、JTBとして描くありたい姿を具体的に世の中に示していきたい」
――宿泊施設に関係するサステナビリティへの取り組みは何かあるか。
「自然、文化など日本の特性や過去の取り組みも大事にしながらグローバルスタンダードをベースにして日本独自のサステナブルツーリズムを作っていく必要があるが、これはJTBだけではできない。特に近い間柄にある旅ホ連の宿泊施設の皆さまとはいろいろなディスカッションを重ねた上で、日本におけるサステナブルツーリズムはどうあるべきかを一緒に考えて、取り組みを進めていくことが非常に大事だ。24年度はそういった連携をさらに密にしていきたい」
――旅ホ連会員に伝えたいことは。
「私はいろいろな海外の観光地を見てきたが、日本の観光地は世界に誇れる魅力を持っている。その価値を経済的な観点のほかに、環境や自然、文化の保護という観点も含めて持続可能なものにしていくことをオープンなコミュニケーションをもとに一緒に進めていきたいので、私たちへの意見や要望は忌憚(きたん)なくいただきたい」
「また、皆さまの施設の中にはサステナビリティに関して非常に進んでいる取り組みや独自性に富んだ取り組みをしている施設が相当あるので、そういう情報を私たちに発信してほしい」
JTB執行役員サステナビリティ担当 西松千鶴子氏