帝国データバンクはこのほど、全国企業対象の景気動向調査の8月分を公表した。同月の景気DI(0〜100、50が判断の分かれ目)は前月比0.1ポイント減の42.3と、2カ月ぶりに悪化した。「景気は足踏み。天候が各地の景況感に影響」と同社。業種別では、旅館・ホテルが同2.2ポイント増の50.0と、3カ月連続で改善した。
8月として54年ぶりに4個上陸した台風が、東北や北海道などの地域、飲食店や農・林・水産などの業種の景況感を悪化させる要因となった。
ただ、今年から始まった「山の日」に伴う国内旅行需要の盛り上がり、東京五輪に向けた公共工事の増加などプラス材料も見られた。
「国内景気はプラス材料とマイナス材料が混在し、足踏み状態が続いている」と同社。
10の業界別では、4業界が改善、6業界が悪化した。
このうち旅館・ホテルを含めたサービスは同0.1ポイント減の47.7と、2カ月ぶりに悪化した。節約志向や五輪のテレビ観戦、台風通過や猛暑で外出機会が減ったことなどが響き、飲食店が同3.1ポイント落ち込むなど、15業種中5業種で悪化した。
ただ、旅館・ホテルは九州のふっこう割が好調なほか、お盆と夏休み需要、中国からのクルーズ船による訪日客の増加が寄与し、同2.2ポイント増加した。
農・林・水産は同2.4ポイント減の40.1と、2カ月連続で悪化した。東北や北海道で低温や日照不足の影響を受けていたところに台風が相次ぎ、タマネギなどの農産物が影響を受けた。
10の地域別では、3地域が改善、6地域が悪化、1地域が横ばいだった。
このうち九州は同0.5ポイント増の44.7と、3カ月連続で改善した。夏休みの旅行・観光シーズンに台風の発生や接近がなく、天候に恵まれた。県別では、地震からの復興が進む熊本が同2.7ポイント増の50.9と、消費税率引き上げ前の駆け込み需要がピークとなった2014年3月(53.0)以来、2年5カ月ぶりに50を上回った。
東北は同0.5ポイント減の42.9と、3カ月ぶりに悪化した。旅館・ホテル、娯楽サービスなどが天候不順の影響を受けた。
近畿は同0.1ポイント減の40.4と、2カ月ぶりに悪化した。訪日観光客によるインバウンド需要が落ち着きをみせたほか、猛暑日が観測史上最多を記録するなどで外出が控えられたことで買回り品などの消費が弱かった小売業で大幅な減少となった。
回答企業の主な声は次の通り。
「コンサートやコンベンションが多くあったため、宿泊が伸びた。またお盆や夏休みは満室日が続いた」(現在、良い、旅館)。
「地震収束とふっこう割の影響でお客さまが帰りつつある」(現在、良い、旅館)。
「天候および五輪の影響で景況感は悪い」(現在、悪い、ボウリング場)。
「天候が悪いせいか客足が伸びない」(現在、悪い、飲食店)。
「五輪効果および国土強靭化計画の影響、リニューアル市場の拡大が期待される」(先行き、良い、防水工事)。
「世界的な日本食ブームで海外輸出販売が好調」(先行き、良い、食料・飲料卸売)。
「ホテル・旅館の予約状況が悪い」(先行き、悪い、乾物卸売)。
「消費税の増税は見送られたものの、最低賃金引き上げが大きく、業績にはマイナス」(先行き、悪い、普通倉庫)。