夏休み目前も発表なし
政府は、都道府県を実施主体に全国からの誘客を可能とする新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」を7月前半にもスタートする方針を示しているが、5日時点で開始時期や制度の詳細が発表されていない。斉藤鉄夫国土交通相は「感染状況を見極めた上で実施のタイミングなどについて適切に判断したい」と説明。新型コロナウイルスの新規感染者数の増加傾向が指摘される中、慎重な対応を迫られているとみられる。
斉藤国交相は5日の会見で、「全国旅行支援は、6月中の感染状況を見極めた上で、感染状況の改善が確認できれば、7月前半に開始することとしていた。6月中は総じて感染状況の改善が続いてきたが、足元の状況も踏まえ、新規感染者数、病床使用率、療養者数、死亡者数など、感染状況を総合的に見極めた上で実施のタイミングなどについて適切に判断したい」と述べた。
足元の感染状況について斉藤国交相は、「厚生労働省の専門家会議(新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード)では、大都市における短期的な予測として今後、新規感染者数の増加が見込まれるとの分析、評価が出されている」と説明し、政府全体の見解を基に判断していく姿勢を示した。
都道府県ごとに現在実施されている県民割(地域ブロック割)事業は、実施期間が7月14日宿泊分までで、切れ目なく観光支援策を実施するとすれば、全国旅行支援をスタートさせるか、県民割(地域ブロック割)事業を延長するしかないが、今後の見通しは示されていない。
全国旅行支援を開始した場合でも、最繁忙期のお盆期間は割引対象から除外する方針(具体的時期は未定)がすでに示されているものの、夏休みの旅行シーズンを目前に、事業の開始時期や制度内容の発表が遅れれば、消費者の旅行計画、観光事業者の受け入れ準備にも影響しかねない。
予定されている全国旅行支援は、国の補助金を受けて都道府県が実施し、地域ブロックなどに限らず、全国を対象に誘客が可能。都道府県は、感染状況の悪化を理由に独自の判断で事業の開始を見送ったり、誘客を停止できる規定が盛り込まれる予定だ。
全国旅行支援の具体的な支援内容は、割引率が40%、1泊当たりの割引上限額が交通付き旅行商品で8千円、宿泊だけなどが5千円。旅行先の土産物店などで使えるクーポンの付与額は、平日が3千円、休日が千円となっている。
全国旅行支援について説明する斉藤国交相