全旅連、地熱発電で報告書


 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、佐藤信幸会長)はこのほど、冊子「地熱発電と温泉地との共生に関する報告書」=写真=を作成した。全旅連の地熱発電検討委員会(野澤幸司委員長)が今年1月までに行った国内の地熱発電所の視察や関係者へのヒアリングを通して得られた地熱発電に関わる現状と課題をまとめたもの。千部を印刷し、都道府県旅館ホテル組合、日本温泉協会などに配布した。

 およそ300ページに及ぶ報告書では、松之山温泉バイナリー発電所(新潟県)、柳津西山地熱発電所(福島県)、大霧地熱発電所(鹿児島県)の3カ所の現地視察の模様をレポート。また国内の地熱発電の現状を専門家、学者らが解説した。

 報告書では「視察ならびにヒアリング調査等から、地熱発電所周辺の温泉地においては因果関係は不確定であれ、泉温低下・湧出量減少・成分変化・噴気衰退・土砂崩れ・群発地震など種々の現象が地熱発電開発実施後に現れているケースが多いことが把握できた」として、「現状の地熱発電には大きな疑問を感じざるを得ない」と認識。「現時点において、地熱発電と温泉地の共生は極めて難しいという結論に達した」と述べた。

 報告書ではさらに、地熱発電所の設置を検討する場合は、全旅連と日本温泉協会が環境省などに提出した5項目の要望((1)地元〈行政や温泉事業者等〉の合意(2)客観性が担保された情報開示と第三者機関の創設(3)過剰採取防止の規制(4)継続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底(5)被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化)が順守され、地域における合意形成がなされることを前提としなければならないと強調している。

 冊子のダイジェスト版を全旅連のホームページ「宿ネット」に掲載する予定。

 
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