全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、佐藤信幸会長)はこのほど、国土交通省が今国会への提出を目指す耐震改修促進法の改正案について、業界からの要望書をまとめた。旅館・ホテルの耐震診断、耐震改修にあたり、地方公共団体に十分な補助金を拠出するよう指導することや、耐震診断結果の公表の猶予など5項目。近く国会議員らに陳情する。
要望書では、南海トラフ巨大地震など、大規模災害の発生が懸念される中、施設の耐震化の必要性を十分認識していると述べた上で、旅館・ホテルに対し資金面で十分な配慮をするよう求めている。
耐震診断と耐震改修については、国と地方公共団体(市町村)の補助金制度があるが、全国約1700市町村の約7割が制度を確立しておらず、その場合は旅館・ホテルなど事業者にかかる金銭的負担が大きくなる。耐震診断の場合、地方の補助制度がない場合は事業者負担が費用の66%、補助制度がある場合は費用の0〜17%になるなど、大きな差がある(延べ床面積5千平方メートル以上の建物の場合)。要望書では国から地方に対し、補助制度を確立した上で、十分な資金援助をするよう指導することを求める。
また、東日本大震災で宿泊業界が500万泊を超す被災者の受け入れを行った実績を背景に、旅館・ホテルを宿泊避難所として指定し、耐震改修を行う際に地域の防災拠点が改修を行う場合と同率の補助を拠出するよう併せて求める。旅館・ホテルが防災拠点として指定された場合は、事業者の改修にかかる自己負担が費用の33〜55%から20〜27%に軽減される(5千平方メートル以上の建物で、地方の補助制度がある場合)。
今回の改正案で耐震診断が義務化されない5千平方メートル未満の建物についても、5千平方メートル以上と同率の補助金を拠出することも要望する。
改正案では、新耐震基準が制定された1981年以前に建築された5千平方メートル以上の旅館・ホテルについて、2015年末までの耐震診断実施と報告を義務付け、診断結果も公表するとしている。要望書では、結果の公表が施設の営業に大きな影響を及ぼすとして、公表までに十分な期間の猶予が必要だとしている。
さらに新耐震基準を満たした施設が表示できる消防の「マル適マーク」のような制度を創設することについても、一定期間の猶予がほしいとしている。
全旅連では、青年部が今月26日に自民党観光産業振興議員連盟を中心とした衆参議員に陳情を予定するなど、要望の実現に向け強力に働きかける。