国際サミットの機運醸成
来年9月に北海道での開催が内定している体験型観光「アドべンチャートラベル(AT)」の国際サミットに向け、関係者の連携強化と知識を深め、機運醸成を図る「アドべンチャートラベル北海道ミーティング」(主催・北海道運輸局)が11、12の両日、札幌市で開かれた。コロナの感染防止対策を徹底した上で、1日目は4コースに分かれての日帰り体験ツアー、2日目はセミナーとAT実践者によるネットワーキングイベントを実施。セミナーでは、駐日ヨルダン大使のニーナ・アンナーブ氏が基調講演を行った。
道内各地から観光協会や観光事業者ら約100人(日帰りツアーは50人)が参加し、基調講演やAT実践者の説明に熱心に耳を傾けた。基調講演でアンナーブ大使は「ヨルダンの成功事例」と題して、全長675キロに及ぶヨルダントレイルを実現した取り組みを紹介。
モーゼやキリストも歩いたとされる地を結ぶ長距離のハイキングコースで、旅行者は40日ほどかけて巡り、その地の歴史や史跡、文化などを学ぶことができる。2016年からヨルダンの観光・考古大臣として同トレイルを世界的な目的地に発展させた立役者である大使は、コース上にある52の町や村を巻き込み、30年掛けて多様性にあふれたコースを作ったとした上で「地域住民の協力、環境の維持、運営組織など、持続可能な仕組みづくりが欠かせない」と強調した。
セミナーの主催者あいさつで北海道運輸局の加藤進局長は、「ATは地域に滞在して体験・交流する学ぶ観光を目指すもので、滞在期間が長く、経済効果も大きい。北海道の自然環境やさまざまなアクティビティ、文化、食などを生かし、新しい観光をリードする地域にしていこう」と述べた。
ATの国際サミットは、アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA、本部・米国)が世界各地で毎年1回開催し、各国から旅行会社やアウトドアメーカー、宿泊業、メディア関係者など800人ほどが参加して情報交換や商談を行う。今年のオーストラリアでの開催はコロナの影響で中止になったが、昨年はスウェーデンで開催され、来年は北海道での開催が内定している。
欧米を中心とするATの市場規模は70兆円を超えるといわれている。アジアで初の開催を通じ、北海道の体験型観光を広く世界に発信できると関係者の期待は大きい。
アンナーブ大使