千葉県観光振興へ 旅行業各社、支援に動く


車内でツアー参加者をもてなす跡見学園女子大学篠原ゼミの学生(左)

 9月の台風15号で大きな被害を受けた千葉県の観光復興へ、旅行業各社や関連企業が動き始めている。ペースはそれぞれだが、既に具体的な支援策を実行している企業もある。各社の取り組みを聞いた。

 阪急交通社は、特に被害が大きかった南房総エリアについて、社員が9月中旬に現地に向かい、現地の状況視察を行うと同時に、被災した宿泊施設の従業員へ飲料水やパン、モバイルバッテリーなどを届けている。

 送客による支援については、「宿泊施設などの再開のタイミングに合わせて既存コースから10月中旬以降にツアーを催行する。商品は関西方面から出発する千葉の主な観光地を巡る周遊ツアー3日間」(広報部)としている。

 JTBも状況が落ち着いた段階で支援プランなどの旅行商品造成を検討。JTB協定旅館ホテル連盟は加盟施設への支援金、見舞金を用意し、宿泊販売の回復に役立ててもらう。

 宿泊予約サイト「ゆこゆこ」を運営するゆこゆこホールディングスは1日、「千葉県応援キャンペーン」を始めた。10月中に同サイトを利用して千葉県の宿泊施設に泊まった人を対象に(サイト会員、メールマガジン購読者限定)、次回予約時に使える2千円分の割引クーポンを贈る。クーポンは来年3月31日まで利用可能。

 JR東日本は、地域と連携したサイクリングイベントで千葉県の復興を支援する。「ステーションライドin南房総」と題したイベントを今月26日に開催。南房総3市1町(南房総市、館山市、鴨川市、鋸南町)の海岸線と田園地帯に設定されたコースを自転車で走るほか、9カ所のエイドステーションで地元の食を味わってもらう。復興支援金の募金や芸能人を迎えてのチャリティーオークションも行う。

 千葉県鴨川市にキャンパスを置く城西国際大学観光学部は、「学生とともに観光面から復興支援を行う」と、JR東日本との共同企画「駅からハイキング 安房天津駅~安房小湊駅編」を予定通り今月20日に実施する。

 事業は学生が企画、運営するもので、観光庁の「産学連携による観光産業の実務人材確保・育成事業 先進的な実践授業事例」にも取り上げられている。

 「学生が地元の観光施設との割引交渉や、(自ら行う)現地ガイドの下準備に奔走している。大逆風の中、観光の力で南房総エリアが元気になるようにしたい」と同大学。

 国土交通省によると、千葉県内の宿泊施設149軒で屋根の損傷や窓ガラス破損の被害が発生しているが、営業状況については不明。観光施設は10施設が現在、臨時休業中(いずれも7日正午時点)。同県富津市の大型観光商業施設「ザ・フィッシュ」は4日に一部の営業を再開。来月1日に第2期の再開を予定している。


車内でツアー参加者をもてなす跡見学園女子大学篠原ゼミの学生(左)

   ■   ■

 日本旅行は千葉県支援の一環で、同県を走るローカル線「いすみ鉄道」の観光列車に乗る日帰りツアーを急きょ企画した。本紙記者も乗車し、現場を取材した。
 ツアーは今月5日に催行。同鉄道起点の大原駅(いすみ市)と終点の上総中野駅(大多喜町)間(約27キロ)を、旧国鉄のレトロな気動車を使い、約2時間かけて往復。車内では伊勢エビをはじめ、地元の食材をふんだんに使った特製弁当を用意し、車窓の景色とともに楽しんでもらった。

 ツアーにはいすみ市と協定し、地元官民と地域活性化事業を行う跡見学園女子大学の篠原靖准教授率いる篠原ゼミの学生も参加。沿線の観光地を案内するなど乗客をもてなした。
 「(いすみ鉄道沿線は)人が温かく、都会にない自然が魅力。ツアーが少しでも復興へのエネルギーになれば」とゼミ長の佐藤あすかさん。

 いすみ鉄道は台風15号の影響で一時運転を見合わせたが、先月14日に運転を再開。現在は平常運行している。

 大原駅近くには、タコの水揚げが関東一という大原漁港がある。毎週日曜には朝市を開催。「台風直後はお客さまが減ったが、今はだいぶ戻った」と駅前の観光センターの職員。先月23、24日に行われたいすみ市の伝統行事「大原はだか祭り」直後は「普段より多くのお客さまにおいでいただいた」と同市企画政策課の丸眞弓美課長補佐。

 いすみ鉄道国吉駅近くの「松屋旅館」は、台風でガレージのシャッターが破損する被害を受けたが、現在は通常通り営業している。普段はビジネス関係の宿泊客が多いが、現在は工事関係者が多いという。経営者の掛須保之さんは、いすみ鉄道を応援する関係者とファンによる「応援団」の団長を務める。この日は自身の宿の名物「たこめし」と、列車をイメージした箱入りのポップコーンを車内で販売。売り上げの一部を義援金にする。

 日本旅行は、いすみ鉄道の観光列車に乗る日帰りツアーを11月9日から12月21日までの毎週土曜にも催行。支援を継続する。


乗客に手を振るいすみ鉄道沿線の関係者ら

 
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