地域経済活性のため、観光に目を向ける商工会議所が増えているが、日本商工会議所(会頭・岡村正東芝会長)が全国約200の会員を対象に観光振興への取り組みを調べたところ、300を超える事例があったことが分かった。地域の食や特産品を切り口にした観光資源開発、農商工連携による新たな観光振興事業など「地域資源の掘り起こしの取り組みが多い」(日商)のが特徴だ。
日商はこの調査結果を受け、商工会議所ネットワークを活用した広域観光やニューツーリズムの推進に向けた活動への支援強化を改めて示すとともに、各地の観光振興への取り組みの活発化に期待を表明した。
「各地における観光振興への取り組み状況等調査」は6〜7月に全国約500の商工会議所を対象に実施。186件の回答があった。観光振興事例数は306に上った。
地域資源の掘り起こしが135事例ともっとも多かった。その1つが、地域の食材や料理といった「食」を新たな観光資源として活用する取り組み。例えば、秋田では商工会議所の観光飲料部会が主体となって「B級グルメ」発掘事業を展開。複数の飲食店で提供されており、新たな名物料理として定着、普及を目指す。このほか、山形・天童の「平成鍋合戦」、新潟・新発田の「城下町しばた全国雑煮合戦」、福井・小浜の「御食国若狭おばま食と文化の交流フェア」などがある。
地域の観光・商工業者が農業や漁業関係者と連携、新たな魅力を生み出し、観光振興に活用する例も。「農漁村への長期滞在促進ツアーの開発を目的としたモニターツアーの実施や農水産物を教材とした食育プログラムを地域全体で推進し、食育体験研修の受け皿となっている」(同)。札幌の「北の農業まるごと体験ツアー」、茨城・ひたちなかの「食育体験観光推進事業」などの試みがこれにあたる。
観光客受け入れ態勢の整備やホスピタリティの向上に取り組む事例は74事例。山形・米沢では携帯電話を活用した観光情報案内システム「米沢あるき」を構築。岩手・一関では観光客に一関の魅力を紹介できる「わが街紹介人養成講座」を開講している。
インバウンド観光を契機とした取り組みも活発化。新潟県観光復興戦略会議(事務局・商工会議所)は東北経済連合会との共催で04年度から韓国観光客誘客事業をスタート。この事業が契機に新潟空港から2次交通付きのスキーツアー商品が造成され、「07年度は韓国からのスキー客が前シーズンに比べ3倍以上増えた」という。
産業観光などニューツーリズムも広がりを見せている。山口・下関では商工会議所内に観光関連事業者や行政の参画による組織を設け、市民や宿泊客を対象に関門海峡沿岸の地場産業資源を活用した「産業観光周遊船」の運航や家族が楽しめるキッズルームを開設、観光素材の掘り起こしを行った。
商工会議所のネットワークを活用した広域連携の動きも進んでおり、神戸・大阪・京都の商工会議所が連携して「広域産業観光モデルツアー」を実施したケースもある。
日商は7月に策定した「中期行動計画」に観光振興への取り組み強化を盛り込んでおり、各商工会議所におけるこうした動きはさらに強まりそうだ。旅行ニーズが多様化する中、観光業界は商工会議所と手を組み、新たな視点での商品造成や宿泊プランの提供を検討してみるのも1つの手といえなくもない。