国交省、「観光圏」法を制定へ


 国土交通省は、2泊3日以上の滞在型観光につながる地域づくりに向けて新法を制定する。「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律案」(仮称)で、今通常国会に提出、今年夏ごろの施行を目指す。複数の市町村、都道府県が連携して誘客、滞在促進に取り組む地域を「観光圏」と呼び、申請に応じて国が整備計画を認定、補助事業などで総合的に支援する。宿泊施設に対しては、新法に基づく財政投融資の新制度が創設される予定だ。

 国内外の観光客による2泊3日以上の滞在を促進するためには、観光地や観光資源を“点”ではなく、“面”で捉えた観光圏の形成が必要になる。新法案では、複数の観光地を結びつけた観光圏を設定し、周遊・体験型の観光メニューの充実、宿泊の魅力向上、移動の快適化などの地域の取り組みを支援する。

 観光圏内の行政や観光事業者、NPOなどでつくる法定協議会の立ち上げを受けて、市町村や都道府県が整備計画を策定、実施主体の事業者は共同で実施計画を作成し、国に申請する。認定を受けると、事業費の最大40%が補助される。

 従来のルネサンス事業に代わる観光地づくりの主要施策で、来年度予算案では観光圏整備促進事業として2億8千万円を計上。「来年度は10数カ所の観光圏を支援する想定だ。観光圏の支援事業は、ソフト事業が中心だが、連携する形で他の社会資本整備事業、公共交通支援事業などのハード事業も導入できるよう配慮したい」(国交省観光地域振興課)。

 観光圏の中には、滞在促進のための事業を重点的に実施する、温泉街などの区域を「滞在促進地区(仮称)」に設定する。来年度の財政投融資には、同地区内の宿泊施設の改修費を対象に、中小企業金融公庫から特別利率で融資が受けられる制度を新設する予定だ。

 中小公庫の企業活力強化貸付として、限度額は7億2千万円、貸付期間は20年以内。貸付後5年間は、最優遇金利の「特別利率(3)」(12月12日現在2.10%)が適用される。6年目以降は基準利率(同3.10%)になる。

 融資対象は、現行資産の10%以上に相当する新築・増改築で、事業のイメージは、(1)パブリックスペースを地域文化の展示や体験交流の場に活用、開放するための改修(2)景観との統一感を創出するための外壁などの改修(3)従来の団体旅行客から、個人・グループ客に対応するための客室改修──となっている。

 このほかにも観光圏を総合的に支援するため、税制の優遇措置として、新法による法定協議会に参加する公益法人が、文化財保護法に基づく登録有形文化財などの家屋、またはその敷地を取得する場合、不動産取得税を課税標準の2分の1に控除する予定だ。

 政府は、観光立国推進基本計画で、2010年度までに、国内の観光旅行を1人当たり年間4泊(06年度2.72泊)に、国内の旅行消費額を30兆円(同23兆5千億円)にする目標を掲げている。これを達成するためにも、観光圏の形成を通じた滞在型観光の活性化が重要課題となる。新法を活用した、地域による滞在日数の拡大に向けた取り組みがかぎになりそうだ。

 
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