13日、国土交通省が東京都内で開いた人材育成検討会で、米国セントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリティ経営学部准教授の原忠之氏が講演、米国の人材育成モデルについて解説した。米国の観光業界が大学の観光系学部に要求する人材水準の高さに触れた上で、「産業界の人材ニーズに大学が留意しないと、構造的なミスマッチが発生する」と指摘。産業界のニーズを大学のカリキュラムに反映させる仕組みなどを紹介した。
原氏は、学生が企業の実務の中で学ぶインターン制度で、米国の観光関連企業が、観光系学部への募集要件に、「投資機会に関する財務分析」「トレンドなどに基づく財務モデルの構築」などの高度なスキルを挙げてくる実例などを紹介した。
「『あいさつができる』『人と接するのが好き』という程度の業界ニーズでは、学生も、学部教員も育たない。産業界が高い水準のインターン学生の要求し、大学がそれにこたえる社会的責任を持つべき。学生と教育機関が成長すれば、恩恵は産業界にもたらされる」(原氏)。
原氏によると、同大ホスピタリティ経営学部2300人のうち650人がインターンを選択している。週16時間、1年半の期間が必修。産業界もインターン制度を幹部候補のリクルートの機会として重視している。このため大学側はインターン学生への企業の評価などを数値化して集計し、カリキュラムに反映させるようにしている。
また、同大学には観光関連企業の経営者から、人材育成について定期的に意見を聴取する委員会が設置されているという。「産業界の御用聞きにとどまらず、ニーズを上回る高い付加価値を持つ人材の育成に努めている」(原氏)。
日本の人材育成の方向性について、原氏は「米国の人材育成モデルが正しいわけではないが、米国の産業界の成長の源であることは否定できない。良い部分は模倣し、悪い部分は改善して、日本独自のモデルを構築してほしい」と期待した。