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令和トラベル篠塚社長
地域を盛り上げる伴走者に 今夏からグローバル展開も
旅行アプリ「NEWT(ニュート)」を運営する令和トラベルは、この1月に国内の宿泊予約販売を同アプリ上で始めた。篠塚孝哉社長に概要と今後の方針を聞いた。
――会社について。
2021年4月に創業した新しい会社。私自身はLoco Partners(ロコパートナーズ)で宿泊予約サービス「Relux(リラックス)」を提供していた。高級旅館・ホテルを集めた予約サービスだが、会社は2017年にKDDIグループに入り、私は2020年3月まで代表を務めた。
次の挑戦を考えていた時、コロナ禍中の2021年4月に今の会社を、海外旅行の会社として立ち上げた。海外旅行とした理由はシンプルで、コロナ禍で皆が海外に行けなくなっている状況の中、逆にこれはビジネスチャンスではないかと捉えたからだ。
――1月から国内宿泊の取り扱いを始めた。この時期に始めた理由について。
今、コロナ禍がほぼ終わり、海外旅行は完璧に回復していないものの、グローバルにチャレンジできる土壌が整ってきたと捉えている。そしてグローバルのカスタマーにリーチをする前に、国内旅行をしっかり行うことが正しい順序だと思い、この1月にローンチした。
グローバルな展開はこの夏から予定している。具体的には英語、中国語、韓国語などさまざまな言語に対応して、外国人の海外旅行、つまりタイ人がオーストラリアに行く、韓国人がシンガポールに行くなどの旅行、そしてもちろん、海外の人が日本に来るという旅行も含めて、全方位的にビジネスをしていきたいと考えている。
――さまざまなOTAがある中で、御社の強みは。
われわれのブランド「NEWT」のキャッチコピーは「かしこい、おトク、旅行アプリ」。「かしこい」に関しては、操作が簡単であるとか、カスタマーに対してオプティマイズ、つまり最適化されているというところを重視してシステムを作っている。
多くの旅行会社のアプリを研究したが、若者にとっても難しい、使い勝手が良くないところが結構あり、賢く簡単なアプリを作ればそれだけで一つの優位性になると思った。アマゾン(ECサイト)で水を買うぐらい簡単な予約サービスならば、それだけで十分、人を集められるのではないかというところがプロダクトの価値のコアになっている。
最近打ち出した機能としては、カレンダーに色を付けて日ごとの料金を分かりやすくする「価格カレンダー」、入国の際に、国ごとに異なる準備すべきものをリストアップする「やることリスト」、パスポートをアプリで撮影することで印字情報をテキスト化する「パスポートスキャン」などがある。
もう一つの「おトク」の部分では、人件費や広告費をできるだけ抑制し、その分を旅行者に還元することを意識している。
――利用者層について。
アンダー29(29歳以下)がおよそ60%。若者の利用が多いが、50代以上のパッケージツアーに慣れ親しんでいる世代も、ホテル、飛行機、観光ガイド、アクティビティなどが全て一緒に簡単に予約できるため、多くいらっしゃる。男女比では女性が6割強と若干多い。
――国内の宿泊予約について。スタート時点の参画施設数と、当面目標とする数は。
既におよそ1万軒が参画されている。サイトコントローラーとはまだ連携していないが、6月ごろをめどにつながる予定だ。他の大手のOTAと同様、2万軒以上の施設に参画いただきたいと思っている。
――温泉地の旅館などは。
積極的に取り組みたいと思っている。旅行者に全国津々浦々、旅行をしてもらいたいという思いがある。
今、東京や大阪はRevPARが過去最高と聞いているが、地方によっては、まだ集客力が弱いところがある。
この夏から予定しているグローバル展開により、地方に向けて難しいカスタマーサポートや多言語対応は弊社に任せていただき、インバウンドの集客が図れたらと思っている。
――国内の宿とともに、交通機関などとのパッケージ販売は。
初めは宿単体の予約サービスとして動かす予定だが、中期的にはマーケットが大きい海外発のツアーも作りたい。例えばソウル発着の東京・大阪ツアーや、バンコク発着の大阪・福岡ツアーなどを想定してもらえばいい。
――その他、新しい取り組みは。
生成AIを活用した検索体験や、AIコンシェルジュなどこれまでにない予約体験を実現させるべく、旅行×AI領域への投資を加速する。AI旅程提案などの開発など、既に実装に向けて動き出している。
――弊紙読者の旅館・ホテル経営者に一言。
単なるOTAというよりも、地域を盛り上げる伴走者を目指したいと考えている。
東京や京都に多くの人が集まっているが、まだ目立ち切れていない地域や、稼働率に問題があるお宿もたくさんあると聞いている。そのようなところに寄り添い、盛り上げたいという思いが強くある。多くの皆さまとパートナーとして取り組みたい。
【聞き手=観光経済新聞 編集長・森田淳】