国際観光旅館連盟(佐藤義正会長、1171会員)は、政府が実現を目指す休暇分散化の施策をその進め方を含めて疑問視している。1日に東京都内で開いた正副会長会議では、現在提示されている地域ブロックごとに大型連休をつくる分散化案への反対意見に加え、議論が不十分なままに来年の通常国会に関係法案が提出されてしまうのではないかとの不安が相次いだ。制度案が固まる前に、国観連の考えを何らかの形でアピールすることも検討している。
休暇分散化について政府は、来年の通常国会に祝日法の改正法案を提出し、早ければ2012年度中の実現を目指すと新成長戦略に盛り込んでいる。観光庁は、「休暇改革国民会議」(6日に初会合)や地方ごとの説明会で合意形成を図る考えで、年内には法案を固めるスケジュールを描いている。
佐藤会長は1日、観光経済新聞の取材に対し、「国を挙げて観光振興策を推進することは喜ばしいが、休暇分散化については議論が不十分なのではないか。国民や経済界にも反対や慎重論があるようだ。国観連会員にも反対意見が多く、もっと時間をかける必要がある。このまま賛成はできない」と述べた。
国観連には、年明けの法案提出に向けて年内に数回開かれる国民会議など限られた機会で分散化の方向性が決まってしまうことへの不安がある。国民会議は経済団体の代表者や大企業のトップ、県知事、大学教授、教育関係者など65人が委員だが、観光業関係は日本観光協会の西田厚聰会長(東芝会長)、日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)の舩山龍二会長の2人だけということにも疑問の声が挙がっている。
佐藤会長は「業界の利益のための分散化ではないことはもちろんだが、国内観光需要の喚起を通じた地域経済の活性化が目的である以上、地方を含めて観光関係者の意見をもっと取り上げて議論すべき。観光業界が全面的に賛成であるかのような印象を持たれたまま、一般社会や国会での議論が進んではおかしなことになる」と指摘した。
政府の休暇分散化案に対し、国観連が今年5月にまとめた会員アンケート調査の結果は反対43.6%、賛成29.9%、どちらとも言えない26.5%だった。正副会長の間には「競争力の高い宿や観光地に需要が集中する可能性がある。その結果、サービスや魅力の全体的な底上げにつながればいいが、拙速な制度変更では地域や事業者に混乱を招く」などの意見がある。
分散化に伴う需要の見通しについても、「混雑の緩和などで旅行環境が良くなるのは歓迎。ただ、今の分散化案で本当に国内観光需要は増えるのか。ハッピーマンデー制度がなくなることによるマイナスの方が大きいのではないか」などの見方も出ている。