国観連、客室の販売・流通効率化に向け実証事業


 国際観光旅館連盟(佐藤義正会長、1306会員)は来年度から2カ年の計画で、客室の販売・流通の効率化に向けた実証事業に取り組む。稼働率や単価が低迷する平日を主として、テーマやターゲットを明確にした付加価値の高い宿泊プランを個々の旅館に企画してもらい、新たに開設する「場貸し」形態のウェブサイトを通じて直販できるようにする。旅館の企画力、販売力を強化し、旅行会社経由では流通しづらい少量多品種の宿泊市場を開拓する。依然厳しい旅館の経営環境を背景に、旅館業界自らが流通の課題に取り組む事業として注目される。

 国観連は、国土交通省が来年度に実施する観光産業イノベーション促進事業の実証実験に応募することで、国からの支援を受けたい考えだ。事業の実施主体として、国観連、旅館、システム関連企業などでコンソーシアム(事業実施協議会)を組む。資金は、国観連予算のほか、国観連の有志旅館の拠出金、国交省の実証事業の補助金を想定している。

 個々の旅館が企画した宿泊プランなどを共同のシステムに登録、直販サイトに一覧表示する。契約は旅館と消費者の間に発生する場貸しサイトとする。参加旅館数は100〜200軒を見込み、システム利用料などの何らかの運営費を徴収することにしている。

 実証事業の狙いは、少量多品種の宿泊プランの開発を促し、直販力を強化することにある。大規模施設を中心に旅館の多くは、送客の大半を旅行会社に依存している。一方で、団体旅行から個人旅行へと旅行形態の主流が移る中、旅行会社に販売を委託したブロック客室の販売率が低い水準にある施設も少なくない。旅館自らが企画力、販売力を高め、客室販売を最大化させることが急務になっている。

 そのため実証事業では、システム構築や直販サイト開設とともに、旅館の自社商品の企画力向上を重視する。マーケティングの専門家らの助言を受けて手本となる商品モデルを提示し、多様な宿泊プランの造成を個々の旅館に促していく。

 求める商品のイメージは、例えば、都市近郊の温泉旅館が提案する平日1泊3食付きのプラン。平日1日の休みが取れるサービス業従事者などをターゲットに、終業後の午後10時ごろのチェックインで夜食、翌日は遅い朝食、温泉を楽しみ、夕食後にチェックアウトするといった商品。こうした宿泊プランの企画、販売で、宿泊単価や稼働率の引き上げにつなげる。

 国観連の長嶋秀孝専務理事は「潜在的なニーズを掘り起こし、市場に出回っていない宿泊プランを企画できるかどうかがポイントの1つ。少量多品種の宿泊プランが集まれば、サイトの販売力も高まる」と指摘。「泊食分離による連泊商品、着地型旅行と連動した宿泊プランなど、多様な商品を創出することは、旅館業はもとより宿泊市場全体の活性化につながる」と期待する。

 実証事業は国内市場を対象にするが、外国人宿泊客も視野に入れ、海外の標準的な流通ネットワークに対応するGDS(グローバル・ディストリビューション・システム)への接続についても試験的な事業を進める計画だ。

 
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