鹿肉のジビエ料理が人気
静岡県の伊豆・浮山温泉にある旅館「ABBA RESORTS IZU―坐漁荘」(35室)。本館・東館、南館、離れ「松琴亭」などから成るが、現在、営業を継続しながら南館の大規模改修を実施しており、今年12月のリニューアルオープンを予定している。その同館にあるレストラン「やまもも」の料理長、山本晋平氏=写真=が昨年11月、農林水産省の料理人顕彰制度「料理マスターズ」でブロンズ賞を受賞した。
料理マスターズは、食材の生産者や食品関連企業などと協働し、地産地消や、食文化の普及の取り組みに尽力した料理人を顕彰するもの。さらなる取り組みと、料理人相互の研さんを促進することで、日本の農林水産業と、食品産業の発展を図ることが目的で今回が15回目の開催。受賞者は、ゴールド賞3人、シルバー賞4人、ブロンズ賞7人だった。
顕彰対象は、提供する料理、サービスが優れていると認められた現役の料理人であることに加え、産地と連携し、地域の風土や調理法に適した作物の導入、または、地場の素材の魅力を生かしたメニュー開発などが求められている。
料理マスターズへの応募理由を山本氏はこう話す。「料理人の技量だけが顕彰対象ではなく、産地の生産者との取り組みが評価対象になっているため」。山本氏は毎日のように野菜などの生産現場に足を運び、生産者との意見交換を日課としている。
やまももで提供される料理は、伊豆近海で水揚げされたばかりの新鮮な魚介類をはじめ、彩り鮮やかな野菜などを四季折々に1品1品、丹精込めて作っている。その中で現在、山本氏が注目している食材がジビエだ。近年、野生の生物の肉を使用したジビエ料理が人気となっているが、坐漁荘では冬の間に仕留められた天然の鹿肉を使った料理を提供している。「栄養素が高いうえ、おいしい」と宿泊客からも人気となっている。
山本氏によると「フレンチの醍醐味(だいごみ)は、素材の味を生かしながら足し算をして、新たな価値を創造すること。だからこそ、生産者との意見交換を通じて、地場の旬の素材を取り入れるスタイルを大切にしている」と話している。
鹿肉を使用したコース料理の一例