夏の国内旅行、逆風の影響少なく堅調に推移


観光客でにぎわった山梨県河口湖

観光客でにぎわった山梨県河口湖

 ガソリン代の高騰、物価高による節約ムードの高まり、そして北京五輪──。国内旅行にとって逆風となりかねない状況が相次いだ今年の夏。それでもJRや航空利用は堅調に推移し、思った以上に落ち込みは少なかったようだ。旅行会社や温泉地・観光地も、地震の風評の影響を受ける東北を別にすると、比較的堅調だったとの感触を得ているようだ。この夏の手ごたえまとめた。

旅行会社
 「7月に入り、間際申し込みが増加した」とJTB。ガソリン高の影響もあり、電車を使った商品が好調に推移し、特に「伊豆・箱根、軽井沢、日光・鬼怒川、那須など近場のエリアに人気が出た」としている。

 「メイトの契約高(人員ベース、前年比)は7月99%、8月93%、9月94%」とKNT。やや苦戦しているが、沖縄は7〜9月で120%となり、「気ままにリゾート沖縄」商品は130%の扱いを記録した。東北の三大夏祭りは70%にとどまったが、10〜12月の出足は好調で「回復傾向にある」と手ごたえを感じている。

 日本旅行の7〜9月の販売額(赤い風船)は北海道、東北、九州方面が伸び悩んだが、トータルでは104.9%に。首都圏はTDR商品などが伸び120.7%、中四国は山口DCなどJRキャンペーンとの連動商品が好調で118.3%、沖縄はグアムやハワイ方面からのファミリー層のシフトもあり10.3%増となった。

 「12日現在の実績は人数ベースで前年比95%」というのは阪急交通社。関東(130%)、中部(105%)方面が伸びたものの、地震の影響もよる東北方面の落ち込み(70%)などが響いた。商品では、「新幹線で行く日帰りミステリーツアー」が売れたという。

 トップツアーの7〜9月の状況は各月とも90%台で推移している。商品ではETC割引商品「中国・四国 わたろうせとうち」への問い合わせが多い。沖縄は例年通り好調で「9月は120%となっている」。

 クラブツーリズムの販売額は前年比105%。「北陸、山陰山陽、九州方面が好調で、北陸は昨年の地震の反動が出た。総じて“西高東低”といえる」。売れ筋の1つは「大人の社会科見学ツアー」で、ファミリー層の利用も多かったという。日帰りバスツアーも好調で、ガソリン高に嫌気をさしたマイカー利用者が流れたと見られる。

 JALツアーズの7月の集客は24万6千人。8月は25万5千人で、それぞれ前年比115%、103%と好調。関東、中部、北陸、中国、九州、沖縄方面が伸びた。

 「7〜9月は人数で前年比104%、販売額で103%」とANAセールス。沖縄は人数、額とも2ケタの伸び。売れ筋はスカイホリデーの「夏バケ」で、北海道は131%、九州が105%、沖縄は122%だった。

温泉・観光地
 観光地や温泉地では、お盆のピーク期を中心に宿泊施設が満館になるなどにぎわったが、期間を通してみると宿泊ベースで前年並み、もしくは前年より若干の減少との感触が多いようだ。ガソリン価格高騰がマイカー客に影響したのをはじめ、物価高も旅行プランに影響を及ぼしたとみられる。岩手、宮城県をはじめ東北の温泉地では、岩手・宮城内陸地震の風評被害が長引き、例年を大きく下回る厳しい状況が続いている。

 山口デスティネーション・キャンペーン(DC)が実施されている山口県の萩市。「8月の宿泊状況は、7月に続き前年比約10%増となりそう。マイカー客は減ったようだが、善戦した」(市観光協会)。

 群馬県の草津温泉では、旅館協同組合によると、8月8〜17日までの宿泊実績は例年並み。14、15、17日には加盟旅館の客室がすべて埋まった。「例年より鉄道の利用客が増えた」という。

 長野県の別所温泉では、昨年のNHK大河ドラマ「風林火山」の効果の反動で宿泊客は微減となりそうだが、マイカーからの他の交通機関への切り替えもみられ、東京都内からの直行バスの利用客は増加傾向にあるという。

 ガソリン価格への対策として、7月からガソリン代のキャッシュバックキャンペーンを展開している静岡県の伊豆長岡温泉は、「キャンペーン効果で宿泊客が回復。7月は6.4%増」(旅館組合)となり、8月もプラスの手ごたえをつかんでいる。

 マイカー客の減少で、周辺の観光施設の入り込みが伸び悩む地域もあるようだ。その中で大分県の別府温泉は、別府市旅館ホテル組合連合会による夏季限定企画、宿から観光施設への夜間送迎バスのツアーが人気で、過去6年で最高の参加者数を見込んでいる。

 ロングの旅先として人気の北海道は、前年並みの客足を維持した観光地が多いようだ。川湯温泉は、「満館の日はなかったが、分散傾向で“ほぼ満館”の日が例年より多かった」(観光案内所)。サミットが開催された洞爺湖温泉は、観光協会によると、「天候にも恵まれ、例年並みの入り込み」。利尻・礼文島では、予約は堅調だったが、「物価高などの影響か、例年より滞在日数が短く、2泊の客が多かった」(稚内観光協会)という。

 東北地方は苦戦が続いている。温泉地では、例年なら満室の旅館に空室が目立った所も多いという。宮城県の鳴子温泉は、「例年の6、7割の客足。お盆以降も予約が入っていない」(旅館組合)。

 岩手県の鴬宿温泉も、「落ち込みが激しい。全体としては例年の7割」(観光協会)。同じく岩手県のつなぎ温泉は、「予約が埋まらない。9月の宿泊予約も例年の5割程度」(観光協会)と先行きにも不安を抱える。

 「首都圏から見れば、東北はどこもひとまとめ」(某観光協会)との声があるほど、落ちこみは広範囲。地震の被災地から遠く離れた秋田県の日本海側や福島県の温泉地でも、風評被害にガソリン高も重なって、例年より客足を落としているところがあった。

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