観光・レジャー目的の訪日外国人旅行者(以下、観光客)の約7人に1人は、日本滞在中、少なくとも1泊は民泊を利用している。観光庁の訪日外国人消費動向調査の2017年7~9月期分から、宿泊先に関する質問に民泊の選択肢が設けられたことで分かった。旅館の利用が約5人に1人であることを考えると、民泊がすでに一定のシェアを獲得している実態が浮き彫りになった。
同調査は対面の聞き取り方式。宿泊先を聞く質問には、これまで民泊の項目がなく、「その他」が選択されていたとみられる。「その他」の利用率は15年1~3月期には1・9%だったが、徐々に上昇し、17年4~6月期には10・5%となっていた。
「その他」の実態を捉えようと、17年7~9月期の調査から選択肢に民泊を追加した。民泊の選択肢は「有償での住宅宿泊(Airbnb、自在客など)」を外国語で表記した。民泊の定義などは回答者の判断で、合法、違法を区別せずに回答したとみられる。
日本滞在中に1泊でも利用した宿泊施設を複数回答で挙げてもらう質問で、民泊の利用率は12・4%。観光客に限ると14・9%に上った。ホテルの利用率は75・1%(観光客78・1%)と高いが、旅館は18・2%(同21・9%)、ユースホステル・ゲストハウスは6・7%(同7・7%)。民泊の利用率は、ユースホステル・ゲストハウスを上回った。旅館よりは低いが、その差は6ポイントほどだった。
観光客の民泊利用率を国・地域別に見ると、上位は(1)シンガポール39・5%(2)フランス35・9%(3)インドネシア29・7%(4)豪州27・9%(5)カナダ27・2%(6)スペイン27・0%(7)フィリピン24・7%(8)米国20・2%。東アジアでは、韓国が15・1%、香港が14・5%、中国が14・3%、台湾が12・6%。
民泊を1泊以上利用した観光客を「利用者」、民泊をまったく利用しなかった観光客を「非利用者」として比較すると、年齢別構成比は、利用者では20代以下が61・3%、30代以上が38・8%だったが、非利用者では20代以下が39・7%、30代以上が60・3%だった。訪日の交通手段にLCC(格安航空会社)を使った割合は、利用者が39・3%、非利用者が27・8%となった。
民泊の利用者は、旅行形態は個別手配が約9割で、同行者は家族・親戚、友人がそれぞれ約4割。初めての訪日で民泊を利用した人も約5割に上った。非利用者より訪問率が目立って高い都道府県は大阪府、京都府だった。
この調査では、民泊の宿泊者数は把握できないが、民泊を1泊以上利用した観光客の日本での合計の滞在日数は平均7・6泊で、まったく利用しなかった観光客の5・9泊に比べて長かった。日本滞在中のすべてが民泊だった観光客の割合は63・2%に上り、民泊とホテル、旅館などを併用した観光客は36・8%にとどまった。
調査結果について観光庁の田村明比古長官は15日の会見で、「比較的若い人たちが家族や友人で民泊を利用し、都市型の観光をしている実態が浮き彫りになった。家族などで少し長期に滞在したいが、費用を高額にしたくないという、既存の宿泊業が対応できていなかったニーズに民泊がはまり、シェアを広げている」と指摘した。
今年の訪日外国人旅行者数を年間2800万人と仮定し、今回調査の利用率をあてはめると、民泊の実宿泊者数は年間約350万人と推測できる。来年6月には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、民泊事業者の宿泊実績が把握できるようになる。観光庁では、宿泊施設を対象に実施している宿泊旅行統計調査の発表に合わせ、民泊の宿泊者数などを公表していく考えだ。