大手旅行会社の国内旅行企画商品の販売がすこぶる好調だ。JTBは「エース」が第1四半期(4〜6月)に人数ベースで前年対比15%増、第2四半期(7〜9月)にいたっては45%増と同社の商品企画担当者も驚愕するほどの高い伸び。近畿日本ツーリスト個人旅行や日本旅行も販売を大きく伸ばしており、苦境にあえいでいた旅行業界に季節と共に“春”が到来している。
近畿日本ツーリスト個人旅行の「メイト」も4〜6月は19%増、7〜9月は50%増と大きな伸び(4月9日現在)。日本旅行の「赤い風船」は4月26日発から5月6日発で13%の2桁増となっている。
方面別に見ると各社ともほぼ全国的に数字が伸びているが、なかでも新幹線が開業した北陸とユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどがある関西方面が好調だ。特に北陸は「首都圏発はもちろん、西日本発も堅調に推移している。旅行先としての注目度が全国的に高まっている」と日本旅行の広報室は話す。
国内企画商品の販売が絶好調の要因について、KNT—CTホールディングスでは、「北陸新幹線の金沢開業が国内旅行全体に好影響を与えている。東北新幹線の新青森開業と九州新幹線鹿児島ルート開業の時にも同様の現象が見られた」(広報)という。また、「円安と消費増税の定着、企業のベアも少なからず影響している」ととらえる。
一方、北陸新幹線の開業など国内観光のトピックスが多いことに加えて、「これまで進めてきた国内商品改革が着実に実を結んでいる成果だ」と強調するのはJTB。人員の増売だけでなく、目標としていた単価アップにも成功したからだ。
基幹商品の方面別プランである通称「赤いパンフレット」は昨年度から、旅館・ホテルを厳選し、眺望のよい部屋を約束するなど、商品価値を追求。感動的な景色を紹介するなど旅先での過ごし方も提案し、値段勝負とは一線を画す。この結果、「宿泊単価は昨年よりも900円上がって2万500円となり、初めて2万円を超えた。これはマーケット全体の宿泊単価を大きく上回っている」とJTB国内旅行企画の騠木俊光取締役は胸を張る。
円安や情勢不安などの逆風が吹く海外旅行からのシフトで国内旅行が伸びているのではないか。その見方についてJTBでは、4〜6月の海外旅行販売が前年並みであることを理由に否定する。
9月には2009年以来となる「シルバーウイーク」の4連休が20〜23日に形成され、旅行に出かける人も増えそうだ。10月以降も好調が続くことを期待する。