JTBの田川博己社長は2日、都内で開かれた新入社員研修の開講式に登壇=写真。入社した340人の社員を前にして、東日本大震災について触れ、「私は被災地が必ず復興し、日本は前進し続けると信じている」と力強く語った。
大震災でJTBグループでは、家族を失った社員や被害にあった店舗があり、さらに、春休みの旅行や企業イベントの中止で大きな打撃を受けている。田川社長は「この危機的な状況は阪神淡路大震災でもあったが乗り越えた」と振り返り、「今回も社員1人ひとりの努力が必ずJTBグループを救い、旅行を通じた人々の交流が早期に復活する」と見通した。
研修会には、東北からJTB東北の新入社員8人も出席。田川社長が歓迎の意を表すと、会場が一体となって大きな拍手が巻き起こった。
近畿日本ツーリスト(KNT)は1日、同社本社ビル(東京都千代田区)で今年度の入社式を行った。80人の新入社員を前にあいさつした吉川勝久社長は、3月11日発生の東日本大震災と経営への影響などに触れ、「今回の事態は役員、社員一丸となって乗り越えなければならないし、乗り越えられると確信している。皆さんもともにがんばろう」と呼びかけた。
吉川社長は、旅行業の現状や内需拡大の切り札として観光産業が政府や経済界からの期待を集めていることなどに触れた上で、東日本大震災について言及。「当社にも大きな影響があるだろう。こういう時こそ皆さんの新しい感覚でのチャレンジや新しいアイデア、元気な行動力に期待したい」と述べ、同社社員としての1日も早い活躍に期待感を示した。
日本旅行は1日、東京の同社本社で入社式を行った。今年度新卒者採用は22人。丸尾和明社長は、東日本大震災で旅行業界も過去にない危機的状況とした上で、マーケットの変化に対応するため顧客目線に立った行動を行うことや、改善意識を持つことなどの大切さを訴えた。要旨は次の通り。
就職活動の際、皆さんは旅行業界をどのように考えたのでしょうか。華やかなイメージのある半面、業界全体が曲がり角に来ていると感じた方や、生産年齢人口の減少により内需の減少が避けられない中、21世紀のリーディング産業として、観光立国を推進する国家的プロジェクトの一翼を担う業界だと考えた方など、さまざまだろうと思います。その中で、間違いなく言えることは、どのような業界、企業であれ、お客さま、そしてマーケットから支持され、選択される企業でなければ、今後生き残れないということです。とりわけ旅行業界では、ネット社会の進展、キャリア・サプライヤーの直販化、慰安・親睦旅行の大幅減少など、マーケットの構造変化が急速に進んでいます。こうした変化をしっかりと捉え、この度の大震災に対する取り組みと併せて、ビジネスモデルの転換を迅速に進め、マーケットから選択していただける企業への変革を進めていかなければなりません。そのベースとなるのは、常に「お客さま」です。皆さんはこれまで皆さん自身がお客さまだった訳ですから、その経験を生かし、お客さま目線に立ち、お客さまのニーズは何か、それを実現するためにはどうすべきかを考え、行動してもらいたいと思います。
私からは、社会人・企業人の先輩として、次の3つの言葉を贈りたいと思います。
まず1つは「基本に忠実に」ということ。社会人・企業人としての基本、そしてお客さま対応の基本は「あいさつ」です。このことをしっかりと励行してください。そして仕事の基本をしっかりと身につけることです。
そして2つ目は、常に「改善意識を持つこと」です。現状に満足することなく、常に次を目指すこと、改善をしていくことが、企業人としても、組織人としても成長出来るかどうかの分かれ目になります。
そして最後に「進歩は反省の深さに比例する」ということです。これから皆さんは様々な経験をしていくことになりますが、その中で失敗することもあると思います。むしろ失敗することの方が多いかもしれません。その時に、失敗を糧に出来るかどうかで、次の取り組みが変わってきます。反省の深さが深いほど、またそれが具体的であればあるほど、進歩は著しいものがあります。
皆さんは大変厳しい中での社会人としてのスタートとなります。私たちは、戦後の廃墟の中から立ち上がり、新しい日本を創り上げるのだという目標をしっかり持ち、ベクトルを合わせて一体となって取り組むことにより、世界から見ても、驚異の復興と発展を成し遂げました。私たち全員が力を合わせ、全力を尽くせば、この難関を必ずや乗り越えることができ、そして新たな活力のある日本旅行を創り上げることができるものと考えています。