大震災から5カ月、東北観光復興の動きを追う「宮城県」


7月24日に行った新露天風呂のオープニング式典

7月24日に行った新露天風呂のオープニング式典

 7月24日、南三陸ホテル観洋(宮城県南三陸町)で露天風呂がリニューアルオープンした。地上5階建ての同館は、志津川湾を間近に望む1階の露天風呂はじめ2階まで津波で浸水したことから、震災直後から露天風呂の再開のために準備を始めた。壊滅状態の南三陸町で職人を集めるのは容易ではなかったが、普段通りの営業態勢にいち早く戻すことが、地域を元気付けるとの同館の考えに共鳴した職人の協力を得て、夏休み前半の再開にこぎつけた。

 津波で壊滅状態となった同町の中で、高台にあることから全壊を免れた同館には、震災直後から多くの被災者が避難。5月5日の600人を最高に8月4日時点でも400人以上が身を寄せるが、仮設住宅のめどが立ったことから8月中には避難所としての役目を終える予定。7日には避難している住民による同館スタッフへの感謝イベントも開かれた。

 露天風呂のリニューアルに合わせ、創業39周年記念の宿泊プランを発表するなど、旅館としての営業活動も再開した。同館女将の阿部憲子さんは「(町からの)人の流出が止まらない上、多くの商店も廃業し、これでは町の復興はままならない。民間事業者であっても町の活性化のためにできることをやるのが大事」とした上で、「多くの人に来てもらい今の町の姿を見てもらうのが一番の支援になる」と強調する。人の集まる場だったスーパーマーケットなども被災したため、同館では被災者の癒しの時間として行ってきたコンサートや子供向けイベントなどを今後も継続的に行い、町民が集う場としての役目も果たしたいと考えている。

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 沿岸地域にありながらいち早く観光客の来訪を呼び掛け始めた、日本三景の松島。夏休みに入り大型観光施設の駐車場には茨城や千葉ナンバーの観光バスも並ぶが、「観光客の入り込みは例年の4分の1程度。道路の渋滞もない」(松島観光協会)のが現状だ。津波の被害によりシャッターが閉まったままの店舗も目につくが、7割ほどの店舗では従来同様に従業員が元気に呼び込みの声を上げる。同協会では「いにしえからの松島の美しい風景は、巨大地震を受けても変わらない。ぜひ多くの方に足を運んでほしい」と訴える。

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 蔵王連峰のふもと、400年以上の歴史を持つ遠刈田温泉(蔵王町)。仙台市から1時間弱の同温泉は、同県の湾岸部や県外各地から多くの観光客が利用してきた。このうち「かっぱの宿旅館三治郎」(大宮幸博社長)では4月下旬から通常同様の営業を行っている。行政の支援の下、避難所として被災者の受け入れを行うことも選択肢の1つだったが、同館では観光、温泉目的の一般客の受け皿になることを選んだ。「先祖から受け継いできた旅館と、従業員の雇用を守るための判断」と大宮社長。原発事故の影響などで首都圏などからの客足が遠のき苦しい状況が続いたが、5月の連休には津波で家を流されたという得意客も宿泊に訪れた。「自らも厳しい状況なのに常連さんはわざわざ来てくれた。旅館を長年やっていて初めてお客さまが来てくれるありがたさの本当の意味を知った」(大宮社長)。

 夏休み期間の予約は常連客中心の集客で例年の8割超程度まで回復したが、秋以降の客足は見えない。だが「遠刈田の温泉で癒されたいというお客さまのためにも通常営業にこだわり、遠刈田の元気を発信していきたい」と力を込める。

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 旅館への避難者が減少し本格的な観光復興に向け動く宮城県の各観光地だが、震災から5カ月経った今でも誘客面での課題は多い。しかし6〜8日に開催された「仙台七夕まつり」では当初予想された175万人を上回る203万人の入り込みを記録したとの明るいニュースもある。7月からは県主導で観光キャンペーンも開始しており、宮城の観光復興への「熱い夏」はこれからが本番だ。

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