2011年度版の観光白書は、東日本大震災からの東北の経済復興に観光が果たす役割が大きいことを示そうと、東北3県で観光消費額と主要産業の出荷額を比較した結果を掲載した。宮城県では、四半期の観光消費額がコメの年間出荷額を上回っていることなどを指摘し、地域経済の復興には他の産業とともに、観光の活性化が必要だと指摘した。
岩手県、宮城県、福島県の3県について、県別データが算出できる10年4〜6月期の観光消費額(共通基準による観光入込客統計)と、県内主要産業の年間の出荷額を比較した。各産業の出荷額は、農林水産省や経済産業省の統計に基づく。
宮城県は、四半期の観光消費額が1131億9300万円。全国6位というコメの年間出荷額811億円を四半期だけで大きく上回っている。工業分野でも全国1位のスイッチの年間出荷額416億4400万円をしのぐ。
岩手県は、四半期の観光消費額が419億2400万円。全国3位のブロイラーの年間出荷額490億円とほぼ同規模で、全国1位のプリント配線板用コネクタの年間出荷額294億2200万円を上回る。
福島県は、四半期の観光消費額が897億1800万円。全国4位のコメの年間出荷額948億円に迫り、全国1位の金属製パッキン・ガスケットの年間出荷額714億1500万円を上回っている。
四半期の観光消費額は、各県を代表する一部の産品の年間出荷額を上回った。白書は「観光による経済波及効果のすそ野の広さを考慮すれば、被災地域の観光が復活することは、地域経済の復興、活性化に少なからず寄与する」と指摘した。
産業規模に関する比較は、最終的な消費段階の付加価値を考慮していない供給側の各産業・産品の産出額(出荷額)と、最終的な需要である観光消費額を比較しているため、データの活用には注意が必要としている。
東北観光の復興 関東客の誘致課題
観光白書は、東北観光の復興について、宿泊旅行統計調査の結果から、東北地方の宿泊旅行者の半数近くを占めていた東北地方居住者の旅行需要の減退を補うため、関東地方などからの誘客が重要な課題と指摘した。
10年1〜12月の東北6県を目的地とする延べ宿泊旅行者は居住地別の構成比でみると、東北地方が49.0%、関東地方が33.9%、その他が17.1%となっている。