宿泊業・旅行業界の若手社員が語る観光業界の魅力・後進へのメッセージ


座談会は東京の観光経済新聞社と各旅館・ホテルをリモートで結んで実施

 観光業界で大きな問題となっている人手不足。しかし、その仕事に魅力を感じ、日々、業務に勤しんでいる若者がいる。旅館・ホテルと旅行業で働く7人の若手社員にお集まりいただき、自身の仕事や業界の魅力を語ってもらうとともに、これから業界を志す人たちへのメッセージを頂いた。

座談会は東京の観光経済新聞社と各旅館・ホテルをリモートで結んで実施

 

 ――(司会)まず、自己紹介を兼ねて、現在の仕事内容と入社動機をお聞かせください。

 川口 JTB千葉支店から参りました川口と申します。よろしくお願いします。

 JTB千葉支店は、教育旅行の営業、一般法人企業さまへの営業、そして自治体さまへの営業の三つに分かれております。

 私は現在、自治体さまへの営業を担当しております。

 入社4年目です。元々、別の業界も志しておりましたが、面接前に今の会社の人と話をする中で、県、観光協会、温泉旅館、自治体を旅行会社がつなげる交流創造事業をしているという話を伺い、その仕事を私の地元の千葉でもしたいと思い、今の会社を志望しました。

川口さん

 

 鎌田 クラブツーリズムの鎌田と申します。私の仕事は首都圏発着の募集型企画旅行の造成。ツアーをゼロから作り、新聞広告や弊社独自の媒体で募集し、参加をいただくものです。中国エリアも絡んだ、主に四国エリアに行くツアーを企画しています。今、入社6年目です。

 募集型企画旅行を作る会社は多いのですが、クラブツーリズムならではのポイントは、添乗員を入社1年目からすることです。自分が作ったツアーに自ら添乗員として参加し、お客さまの声を直接聞くことは、当社独自のやり方だと思います。

 旅行会社を志した理由ですが、面接では旅行で日本を変えたいと、ちょっと格好つけたことを言ったりとか、元々地方創生に興味があり、その仕事に携わりたいと思い、今の会社に内定を頂きました。

 ただ、本音を言うと、当時付き合っていた彼女と旅行に行くときに、どこに行ってどこでご飯食べてどこに泊まってという、プランを作るのがすごく楽しくて。自分の中で「旅行を作るのって、すごく楽しいな」と就職活動の中で改めて気付きまして、自分の中で外せないところだと思い、志した形です。

鎌田さん

 

 ――付き合っていた彼女は?

 鎌田 最近、結婚したみたいです。気にしていませんけど(笑い)。

 一同 (笑い)。

 中村 日本旅行の中村と申します。私はICT営業推進部という、オンラインで個人旅行を販売する部署で働いています。入社して今年で5年目になります。

 当部では、公式サイトの運営から、SNSやオウンドメディアでのプロモーションまで、当社のウェブマーケティング全般を統括しています。その中で私はオンライン広告を担当しております。検索サイトに表示される広告から、最近では、駅のサイネージ広告まで、私どもの部署が担当しております。

 一見、旅行業をやっているようには見えないかもしれませんが、旅行という商品をオンラインでどのように販売していくのか、旅行マーケティングの分野で働いています。

 入社した動機ですが、観光系の大学に通っていたこともあり、最初から観光業は考えていました。旅行会社だったりホテルだったりを見ていく中で、私も地方創生に興味があり、どこかの地域を観光で盛り上げられたらと思い、志望しました。配属されたのはオンラインの部署ですが、いまの仕事も地方創生につながっていると実感する場面が多々あります。 

中村さん

 

 ――観光系の学生でも進路に観光業を選ばない人が多いようですが、周りの人たちはどうでしたか。

 中村 半々ぐらいですね。私の周りは旅行会社に入る人が多かったのですが、男性は少なかったイメージです。

 小原 東武トップツアーズの小原と申します。入社4年目になります。私は官公庁事業部に所属しておりまして、行政への営業、中でも東京都の受託事業を担当しております。現在は東京都の魅力を世界に発信するプロモーションの事業に携わっております。少し前には新型コロナウイルス感染症の宿泊療養施設であったりとか、ワクチン接種会場の運営の業務をしておりました。

 入社の動機ですが、中村さんと同様に私も大学で観光学部に所属しておりまして、自然と観光業界というものを意識していました。あと、旅行好きの両親のもと、幼少期から旅行に行く機会が多かったです。やはり旅行は心に残る思い出であり、私もお客さまに、そのような非日常の時間をより良いものに、思い出に残るものにしたいという思いから、志すようになりました。

 

 ――小原さんの同級生は観光業に進んでいますか。

 小原 あまり多くはないですが、友人では旅行業界や航空業界、ホスピタリティの業界に就く人がいました。

 

 ――ご両親が旅行好きということで、招待をしたことは。

 小原 はい。年に1回、家族で旅行に行くのが定番になっているのですが、私が旅行をアレンジして、祖父母や両親を招待したことがありました。

 東方 さかえやの東方と申します。入社3年目になります。フロント部署の所属で、マネージャーをやらせていただいております。お客さまとのチェックイン前のやり取りが主で、旅行会社に出すプランの作成や、旅行会社の担当の方とのやり取りもしております。採用担当でもあり、新入社員の指導や教育も行っております。

東方さん

 

 ――入社動機は何でしょうか。

 東方 元々、旅館業を志望しておりまして、そのとき、さかえやのインターンシップに参加したことがありました。そのインターンシップを通して、この会社は人を大切にする会社だと思い、その社長の理念に引かれて志望しました。

 

 ――さかえやさんは全旅連青年部主催の「旅館甲子園」でグランプリを受賞しています。

 東方 入社前に旅館甲子園のDVDや動画サイトを見て、お客さまを大切にするとともに、スタッフ同士の関わりも大切にしているという印象を受けまして、そこも入社の動機になりました。

 

 ――ここ数日の状況はいかがですか。

 東方 お盆も終わりましたが、8月中は満室の日が多く、渋温泉も8月は夏祭りをやっておりまして、お客さまがたくさんいらして盛り上がっております。

 永岡 柏屋旅館の永岡と申します。入社がこの4月で、新卒1年目です。現在の仕事内容はフロント、食事出し、掃除などマルチタスクで宿泊業務に関わっています。

 私は元々、自分で旅館を持ちたいという夢があり、旅館業を志しました。学生のとき、弊社のインターンに東方さんと同じように参加した際に、先輩方の誇りをもって働いている様子を見て、私もこういうふうに働きたいし、こんな旅館を持ちたいと思い、志望しました。

永岡さん

 

 ――新卒1年目でマルチタスク。毎日大変では。

 永岡 初めは覚えることが多くて大変でしたが、今は少し慣れてきました。マルチタスクの旅館で働くことが好きな道に近づくことだと思い、今は毎日充実して過ごしています。

 

 ――社長は優しいですか。

 永岡 とても優しいです(笑い)。小さな会社なので、従業員との距離も近くて、よくお話ししてくださいます。

 増田 銀座国際ホテル営業グループの増田と申します。お客さまのチェックイン、チェックアウトなどの接客をメインにフロント業務をしております。清掃会社の窓口も担当しております。昨年からは採用も担当しておりまして、面接ですとか新入社員の研修、育成を行っています。

 以前は山梨の旅館で働いておりました。お客さまからお褒めの言葉を頂いたり、「増田さんがいるからまた来るね」というようなうれしい言葉を頂き、接客の楽しさを知るようになりました。東京に引っ越すことになったのですが、また接客をしたいと思い、ホテル業ならいろいろな方と関わりを持てて、より近い距離で接客をできると思い、今のホテルに入社しました。

増田さん

 

 ――今の会社は入社何年目ですか。

 増田 入社5年目です。旅館には4年勤めておりました。

 

 ――旅館とホテルの仕事の違いは感じますか。

 増田 旅館のときは仲居をしておりまして、1日に担当する部屋が3部屋でした。部屋は50室あるのですが、自分が担当する部屋の方と時間を過ごすことがほとんどでした。今のビジネスホテルですと、95室あるのですが、チェックイン、チェックアウトでほとんどのお客さまと話をしたりですとか、そういった機会が多いです。

 

 ――採用も担当されているとのことですが、「この人は採用したい」と思うポイントは何でしょうか。

 増田 接客業ですので、今までの経験も大事ですが、人のことが好きだったり、明るさですとか、この業界で頑張っていきたいという意気込みが見える方は未経験であっても一緒に働きたいと思いますね。

 

 ――ご自身が関わる仕事の魅力について。また、どういったところにやりがいを感じますか。

 川口 私は元々地方創生の仕事をしたいと思い、入社しました。「地元に人を呼ぶ、関係人口の拡大をしたい」「地元の人々のためになっている」という仕事に携われているところに、日々やりがいを感じています。

 旅行会社の仕事は多岐にわたる、というところも魅力だと思います。実際、コロナ禍の3年間は、旅行外の仕事がメインでしたがやりたいことに何でもチャレンジでき、そのリソース、アセットが自分の会社、グループには備わっていると思います。お客さまからさまざまな要望を受けても、応えられるだけのものを持っている。そこが魅力だと思います。

 

 ――地方創生に関心を持っている方が多いようですが、進路に公務員は考えなかったですか。

 川口 そうですね、考えはしましたが、地方を盛り上げることと、もう一つは海外で働きたいとも思っておりまして、その両方を実現できる業界や企業を選んだところがあります。

 鎌田 入社動機でも触れさせていただきましたが、自分の作りたい企画をゼロから作れるところが魅力的だと感じています。

 NHKで「らんまん」という高知県が舞台のドラマが放送されていますが、放送が決まると地元が盛り上がって、舞台になった植物園を絡めたツアーを作ってほしいなどと要望が出ました。そのようにお客さまの関心がありそうなところにアンテナを張り、情報収集をして、ツアーをゼロから作り、お客さまに参加をいただく。今までになかったものを作り出せるところが楽しいし、日々勉強にもなると感じるところです。

 最近は旅行会社を通さなくても自分で旅館と新幹線を抑えて旅行に行くという方が、特に若い方で増えているようですが、旅行会社だからこそ実現できる旅行があります。首里城のプロジェクションマッピングや、コロナで実現できなかったのですが、瀬戸内海の直島の宿を1棟貸し切るなど、個人ベースではできないツアーを作れるのもこの仕事ならではの魅力だと感じています。

 中村 オンライン業務は全てがすぐに数字に表れます。例えば、広告の言葉を少し変えただけで、次の日にはクリックされる率が上がり、オンライン商品の販売が拡大したりなど、自分が携わったことの評価が目に見えて分かることがモチベーションにつながっています。

 旅行することを決めている人に表示する広告は、すぐに販売に直結するので仕事の成果が見えやすい広告です。一方、まだ検討段階の方を後押しをする広告は、旅行や地域の魅力を伝え、多くの方の旅行意欲を喚起し、広く地域への貢献ができます。私は、ここにオンライン広告の仕事ならではのやりがいがあると感じています。

 小原 仕事の魅力は社会貢献度が高い業務に携われることです。宿泊療養施設やワクチン接種事業では、感染者数を減らすという社会課題に向き合って、人の命に関わることでしたのでプレッシャーも大きかったですが、やり遂げたときには達成感を感じましたし、自分が社会に貢献できていることにとてもやりがいを感じました。

 私も旅行会社に入る前は、教育旅行や法人旅行をイメージしていましたが、川口さんもおっしゃっていたように、実際に入社すると本当に何でも屋さんで、イベント業をやっていると思ったら、手配業務だったりと、本当に多岐にわたっています。いろいろなことに挑戦できるのがこの会社の魅力だと思います。

 東方 旅館に来られるお客さまの多くは誕生日とか結婚記念日とか、何かのお祝いとか目的を持っている方が多いです。たまにお客さまからサプライズのお祝いをしてくれないかとか、客室の飾りつけをしてくれないかと言われ、させていただくこともあります。そういったことでお客さまの思い出づくりのお手伝いができることも魅力です。

 たまにプロポーズでご利用いただくお客さまがいて、電話やメールでやり取りをしながら当日の流れを決めていくのですが、その準備段階でのドキドキ感というか、お客さまと緊張感を一緒に味わって、成功したときにはお客さまと一緒になって喜べるというところも魅力を感じるところです。

 フロントはお客さまと直接接する機会は意外と少ないのですが、「電話対応が丁寧でこの旅館を選びました」とか「電話やメールの対応で優しくしてもらったので、安心して旅行に行けました」という口コミを頂いたときは、頑張って良かったなと思います。

 

 ――今はネットがあって、口コミでいろいろ書かれて現場も大変ですね。

 東方 旅館全体の評価につながりますので、毎日、全スタッフが口コミをチェックしながら、口コミを頂いたお客さまにはお礼のはがきを書いたりもしております。

 永岡 私の仕事の魅力は人の心の温かさを感じられるところです。直接お客さまと近い距離で話ができますし、笑顔を見ることができたり、ありがとうと言われて温かい気持ちになります。

 お客さまから見えない仕事であっても、その笑顔のためなら頑張れると思っています。

 またアンケートで私のことを書いてくださったり、お客さまから「頑張ってね」とお声掛けを頂いたりすると、本当にうれしい気持ちになります。

 従業員同士連携して、みんなで作り上げる仕事なので、喜びをみんなでシェアすることもできます。人の温かさを感じられるところは、旅館の仕事の大きな魅力だと思います。

 

 ――口コミもやはり気になるところですね。

 永岡 口コミ以外でも、うちはアンケートもユニークで、「従業員応援メッセージ」というものがあり、そこに書いてくださるお客さまも結構いらっしゃいます。

 増田 自己紹介でもお話しさせていただきましたが、お客さまからの感謝の言葉ですとか、笑顔ですね。自分のサービスでお客さまから「ありがとう」という言葉を頂けると、働くモチベーションになります。

 仕事の魅力は毎日たくさんの出会いがある点ですね。常連のお客さまも多いのですが、当館は東京の中心に位置しておりまして、国内外からさまざまな方が来られ、訪れる方が毎日違いますし、起きることも違うので、毎日フレッシュな気持ちで仕事に向き合うことができます。

 フロントの業務以外にも、採用や販促など、いろいろな仕事を経験できるところも自社の魅力です。

 

 ――今はインバウンドのお客さんが増えているのではないですか。そのあたりの対応はどうでしょう。

 増田 そうですね。多くなっております。フロントスタッフも英語を片言ですとか、いろいろやりとりはできますが、お客さまには英語以外の母国語しか話せない方も多く、そこはアプリを使ったり、ジェスチャーを交えながら、毎日フロントスタッフで協力しながら接客をしております。

 

 ――社内での研修などは。

 増田 英会話については、社員にハンドブックが渡されておりまして、そこで使う言葉を見つけたりしています。

 

 ――観光業界で人手不足が叫ばれています。業界で実際に働く皆さまの視点から、どうすれば解決に向かうと思いますか。

 川口 コロナ禍が一段落し業務が戻ったことで、自分の支店も人手不足を感じます。連携先の旅館、ホテル、バス会社など、どこと連絡を取っても各社人手不足と言われます。

 人手不足の要因の一つは、この業界の労働環境の厳しさと賃金水準の低さにあると感じます。賃金は、利益率と関連しますが、例えば日本総研の調査「観光業の人手不足の現状と課題」には、全産業の賃金比較や、離職率などが出ています。これによると休日や賃金の面で、平均を下回る結果が出ています。この状況であれば、採用で負けてしまうのは当たり前のことだと思います。

 業界全体で給与水準を上げるためには、マルチタスク、ほかの会社と連携したジョブシェア、RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)のようなことが実現できると、人手不足も少しは緩和できるのではないかと思います。

 鎌田 川口さんからもありましたが、弊社の方も人が足りていない。特に若手。入社2、3年目ぐらいで「違う業界に行きます」という人が結構多いです。コロナ禍だったこともありますが、思っていた業務と違うというか、ミスマッチがあって退職する若手社員が多いという印象です。

 インターンシップに参加して、先輩社員のキラキラした部分の話を聞いて、実際に入社しても思っていたことと少し違う。雑務という言い方は悪いですが、事務的な作業が意外と多いというギャップで辞めてしまう人が多いです。採用の段階で、そういった作業もするという話を、決して隠しているわけではないでしょうが、もっと出していけば良いのではないでしょうか。逆にそのような業務が得意だからと旅行会社を志す人が増えてくるかもしれません。

 国が全国旅行支援やGo Toトラベルなど、旅行をする人を増やす部分のサポートがかなりありましたが、例えば採用の広告費を補助するなど、旅行を担う旅館・ホテルや旅行業の人材を増やす方にも予算を使っていただけたらと思います。

 中村 旅行業と聞くと、旅行相談を受ける店舗や、旅行商品を造成する部署、最近では地方創生の仕事をしていることも知ってくれている方は多いと思うのですが、ぱっと頭に浮かぶに「オンライン」という仕事はあまりないと思います。私自身、実際ICT営業推進部に配属され、こういう役割もあるのだと知りました。

 就職活動をする人に、「旅行業って、そこだけじゃないんだよ」というところを伝えていくことも大事だと思います。弊社の採用サイトで、実際に私の取り組んだプロジェクトを実例に、ICTの仕事の内容や働く職場の雰囲気を紹介しています。「旅行予約がオンラインシフトしている現在だからこそ、こういう部署での働き方がある」という業界の流れや活躍の仕方を知ってもらうことが大事だと思います。

 小原 やはり旅行業界は川口さんもおっしゃっていた通り、決して高賃金な業界ではないと思うんですね。なので学生から「もっといい業界があるのでは」と、選ばない選択になってしまうのだと思います。

 旅行業は感染症や災害など、社会情勢に左右されやすい業種です。以前の個人旅行だったり、法人、教育旅行というものに縛られていると、変わらないままなのかな、と考えてしまいます。コロナ禍を経て、今が変わるチャンスで、先ほど申し上げた受託事業だったり、新たな取り組みをしていかないと、賃金も変わらないのではと思います。

 私のチームでも、今は地方創生でまちおこしだったり、環境問題に興味がある上司は自分で企画書を作って行政に持って行くなどの新たな取り組みをしています。

 コロナ禍を経て、私たちも変わっていけたらと思います。

 東方 旅館業でいいますと、人手不足の原因の一つは、拘束時間が長いとか、休日が取れないというイメージが学生さんたちにあることではないでしょうか。実際に採用担当をしていても、「この日は休めるのですか」とか「朝早くて夜遅いのではないですか」という質問をすごくたくさん頂きます。

 改善策として、弊社が実際に行っていることを言うと、希望休を取れるシステムづくりです。弊社は土日も休める仕組みをつくっておりますし、男性スタッフでも少し前ですが、育児休暇を取ったスタッフもいます。時短勤務で土日祝日は必ず休みというスタッフもいます。

 そのような働き方ができる理由としましては、弊社はフロント部署、サービス部署、ハウスキープの部署、キッチン部署がございますが、誰でも全ての部署の仕事ができる、ローテーションができる仕組みをつくっております。入社してすぐ、ジョブローテーションの研修があります。マネージャーも定期的に代わることがあります。ですのでマネージャーだけが休みづらいとか、この部署だけは人手不足で休みづらいということはありません。

 そのような仕組みで休みが取りやすい会社づくりをしております。業界全体に広がれば人手不足の解消にもつながるのではないかと思います。

 

 ――館内業務の省力化に、IT機器などの導入はありますか。

 東方 予約システムを自動化したり。あと、以前は夜は21時まで、朝は7時半から、チェックアウトの忙しい時間も電話を取っていたのですが、今は20時には留守電を入れて、朝もチェックアウトの時間後まで電話を取らず、スタッフの拘束時間が長くならないような仕組みにしております。

 

 ――今は休館日を設けている旅館も多いですが、貴館はいかがですか。

 東方 定期的に休館日はあるのですが、去年から行っていることとしましては、8月15日とか年末年始など、忙しいピークのときに、スタッフも家族と過ごせる時間をつくろうと、休館日にしました。休館日は2年前から多く取るようにしました。

 永岡 私のインターンシップに参加して就職を決めた経緯から、職場や地域を生で見られる場づくりが必要だと思います。

実際その地域に行ってみたり、職場を見ないと不安なところがあると思います。現場や地域を見れば、自分にできそうか、できなさそうか、想像できると思います。

 

 ――インターンシップは旅館業界でも取り組むところが増えています。

 永岡 コロナ禍もあって、近年はリモートでのインターンシップが多かったのですが、生の対面で参加できる機会がこれからどんどん増えればいいと思います。

 増田 人手不足の原因は何かと考えたときに、環境の変化もあるのかなと思っています。コロナ禍でリモートや非接触が注目されて、そういった働き方も注目されて、接客の仕事を志望する人が少なくなっていると感じます。

 新しいホテルがどんどん建っておりまして、元々人手不足の中で、さらなる需要増ということも大きいと思います。

 弊社は従業員が気持ち良く働けるような環境をつくるために、働き方の見直しを行っています。

 独立系ホテルの弊社ならではの特長として、社員一人一人に判断を任せられることが多く、個人の意見が通りやすかったりすることもあります。

 弊社は新卒の人が少なく、中途採用の人が多いのですが、未経験の人でも安心して入社できるように教育の基盤づくり、例えばマニュアルの策定や研修などをしっかり行うことを心掛けております。

 リモートや非接触で働きたいという人に対しては、接客の楽しさを訴えることが重要だと思います。

 

 ――増田さんのホテルに外国人の従業員はいらっしゃいますか。

 増田 過去にアルバイトの人はおりましたが、今はおりません。私と少しだけ期間がかぶっており、一緒に働いていたことはありました。特に外国の人だから、日本の人だから、という意識はありませんでした。

 

 ――これからさらに外国人の労働者が増えると思いますが、その必要性については。

 増田 採用活動をする中で、日本に在住の外国人の方からの応募もあります。こちらの求める人材の方でしたら、もちろん働いていただきたいと思いますし、海外からのお客さまも増えておりますので、言葉が通じるとか、お客さまの安心感にもつながると思います。

 

 ――さかえやさんに外国人スタッフは。

 東方 正社員で3人おります。サービス部署で接客をしている人と、キッチンスタッフ、フロントスタッフに1人ずつです。

 渋温泉は外国人のお客さまが多いこともあり、いろいろな言語を話せるスタッフがいると、食事などサービスの面でもすごく助かりますし、人手不足の中で本当にありがたいと思います。

 

 ――外国人スタッフの頑張りを見て、ほかのスタッフも励まされた、いう声もよく聞かれます。

 東方 入社したとき、日本語を片言しか話せなかったスタッフもどんどん上達して、日本人以上に日本語がうまいのではないかというスタッフもおります(笑い)。4カ国語ぐらい話せるスタッフがおりますので、本当に助かっています。

 

 ――柏屋さんはいかがですか。

 永岡 先輩に1人おります。仕事内容は皆と同じマルチタスクで、いつもいろいろなことを教えてくださいます。

私どもの旅館はタトゥーがOKなのと、ヴィーガン料理も提供しているので、海外からのお客さまが多く、半分以上が外国の方という日があります。その面でも先輩スタッフにはすごく助けられています。

 

 ――最後にこれから観光業界を志す人たちへ、メッセージをお願いします。

 川口 観光はお客さまに楽しさや喜びを提供する業界ですので、そのイメージから志望する人も多かったと思います。コロナ禍がそうであったように良いときもあれば厳しい環境に耐えなければいけないときもあります。等身大の業界や会社を知った上で、志してほしいと思います。

 旅行、観光以外の仕事に関わったとしてもポジティブに、プラスに捉えてほしいと思います。私は今、地域創生がメインの業務です。元々そういったところを志していたところもあり、今の仕事が楽しいですし、一概に旅行にはくくれない、そういった領域にも魅力を感じてほしいと思います。

 「旅行をやりたかった」「イベントをやりたかった」と言って辞めた同期もいます。コロナ禍なので仕方がなかった面もありますが、かつても9・11や、東日本大震災など、さまざまなことがありましたし、これからもリスクはなくなりません。ただ、そのような状況の中でも、「さまざまなことができる」というところに魅力を感じていただき、ぜひこの業界を志していただきたいと思います。

 鎌田 私は今、入社6年目ですが、「数字を残す」「会社を存続させるために利益を出す」というところに少しずつ意識を持ち始めているところです。

 根本に「自分自身が作った旅行で人を楽しませたい」という思いがあります。旅館の方、食事施設の方、お土産屋さん、そういった旅行に関わるさまざまな方々と共に旅行を作り、それによってお客さまに楽しんでいただく、というところに魅力を感じています。そして実際参加をいただいたお客さまから「良かったよ」とか、うれしいご意見を頂けるところが働くモチベーションになっています。

 一緒に働くメンバーも、全員が「お客さまのために」という思いが根本にあり、その思いを大切にしながら働いています。

 そんな空間、職場がすごく楽しいと自分は思っています。細かい雑務や事務作業などはもちろんありますが、全ての作業がお客さまの満足につながっていると思い、日々務めています。

 出身は横浜ですが、四国を担当するようになり、元々4県がどこか分からないような状態でしたが(笑い)、各県の魅力を聞かれればすぐに答えられるようになりましたし、自分の担当する県はやはり好きになってしまうんですね。

 地方出身の方は、自分の県を盛り上げるために、自分の県の魅力を広く知ってもらうために、ぜひ旅行業に入ってもらいたいですね。お薦めの業界です。忙しいとか給料が少ないとかの先入観があるかもしれませんが、それに代えられないものが観光業にはあると思います。

 中村 働き方が変わってきました。例えば、営業とか店舗とかリアルな出勤が中心となる部署に在籍していても、育休や産休を経て復帰をする際に、よりリモートワークのしやすい環境の部署や仕事を選択して、家庭と両立して働き続けるといったように、働き方が柔軟になってきています。

 これからこの業界を志す人にとっても、決して働きづらいということはなく、かつ女性ならではの働き方ということもしっかり取り入れていますので、安心して志望をしていただけたらと思います。

 小原 私も入社する前、旅行といえば教育旅行、法人旅行、個人旅行、ツアーというものを考えていましたが、実際に入社すると、何にでも挑戦できて、例えばオリンピックであったり、コロナ関連であったり、大きな仕事に携われるというのは本当に魅力だと思います。

 賃金という現実的な話もしましたが、それに代えられないやりがいがあります。マイナスの面だけではなく、プラスの面もぜひ、考えていただきたいです。

 旅行の枠にとらわれず、自分の興味があるものに挑戦できます。若い皆さんの新鮮で斬新な視点で旅行業界を盛り上げていただけたらと思います。

 東方 学生さんや一般の方の中で旅館というと、観光をしたついでに泊まるところというイメージを持っている人も多いと思います。しかし実際に来て下さるお客さまの中には、「さかえやに泊まるために旅行に来たんだよ」という方もすごく多いです。

 お客さまと接する中で、自分が意識してきた接客というものを認めてくださった瞬間とか、お客さまの笑顔とか、思い出ができる瞬間というものを間近で見られたりもします。

 学生の皆さんや興味のある方には、そういった瞬間を私たちと一緒に体感していただければと思います。
永岡 観光業は地域の個性や良さをお客さまに伝えることができる仕事で、地域の文化の盛り上げに貢献できるのではないかと思います。

 地域が大切にしてきたものを、私たちと一緒に守っていただけたらうれしいです。

 増田 コロナを経験して、皆さん旅行ですとか、人と会うことがなくてはならないことだと改めて気付いたと思います。

 これから観光業界はもっともっと盛り上がっていくと思いますし、国内にとどまらず、今まで日本に来たくても来られなかった海外の方も、国境のオープンに伴って、どんどん増えてくると思います。

 学生さんや、観光業界に興味のある方は、日本の経済の柱になる業界だと思いますので、ぜひ一緒に盛り上げていただけたらと思います。

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