公益財団法人日本交通公社(JTBF)が1日に東京都内で開催した旅行動向シンポジウムで、セントラルフロリダ大学ローゼンホスピタリティ経営学部テニュア付准教授の原忠之氏が講演した。テーマの一つが、インバウンドの成長などを踏まえた観光振興財源の確保手法。日本各地で宿泊税の導入が議論される中、米国フロリダ州オーランド地域の取り組みを事例に、宿泊税の意義や仕組み、その税収を運営の財源とするDMOの在り方について提言した。
成長が見込まれるインバウンドを取り込むには、DMOが観光地経営を担い、マーケティングや受け入れ環境整備に資金を投じる必要がある。
「日本型観光協会の財源には、地方政府の一般財源が充てられている。一般財源は基本的に日米どこでも多くの部分は、地域住民が払う固定資産税。少子高齢化、人口減少による税収減で中長期の持続性には懸念がある」
日本政府が世界水準のDMOの育成を目指す中、米国型DMOの事例が参考になる。米国型DMOの財源は、地方政府の一般財源ではなく、旅行者に課す宿泊税が主な財源となっている。宿泊税の税収がDMOの運営費、観光インフラ整備などに充てられている。
フロリダ州オーランド地域(オレンジ郡)は、人口は京都市とほぼ同規模の約140万人だが、2019年の来訪客数は約7500万人でニューヨーク、ラスベガスを上回る。宿泊税は定率制で2023年の税収は約538億円に上る。
オーランド地域の宿泊税は、ホテル業界を中心にホスピタリティ業界が地元政府に陳情して導入された。きっかけは1973年のオイルショック。71年のディズニーワールドの開業で観光ブームが起きたが、レジャー客に依存してきた地域経済をオイルショックの不況が直撃した。対策を講じるための新たな観光財源として宿泊税が打ち出された。
オーランド地域では、家族客などがメインで学校の夏休みなどに観光需要が集中し、季節の繁閑差が課題だった。閑散期対策として新規顧客の開拓、そのための商品造成、施設開発が必要に。宿泊税の税収を活用することで、国際会議場建設によるMICE客獲得、DMOの設立によるマーケティング強化などの新たな施策が可能になった。
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