中国富裕層向けに温泉地、旅館などの日本の情報を紹介する会員制サービス「HI日本(ハイニッポン)」を10月から始める富士(東京都港区、眞柄泰利社長)は9月29日、インバウンドセミナー「中国個人観光ビザ解禁・これからどうなる、インバウンド市場創出」を渋谷エクセルホテル東急で開いた。観光業界などから92人が参加した。
眞柄社長はあいさつの中で、中国の旅行会社と提携してHI日本の加入宿泊施設に送客する計画を発表。月額1万円で24時間利用可能な翻訳コールセンターサービスのデモンストレーションも行った。
また中国経済新聞社の徐静波社長が、7月の中国個人観光ビザ発給開始後の状況について講演した。同氏は、中国本土からの海外旅行者数が2008年に4700万人を突破し、2015年には1億人を超える見通しを中国国家旅遊局が発表したことを紹介。その上で「訪日中国人は08年度100万人で年間増加率が18%だが、中国の海外旅行者数の2・1%でしかない。今後のやり方しだいで大きく数字を伸ばせる」とした。
また中国人訪日客の観光の特徴として、日本全国を貸切バス1台で周遊するなど移動時間が多すぎる、平均買い物費用が約16万円と高額であることなどを挙げた。
中国人受け入れ体制の問題点として「年収20万元(300万円)の壁がある。なぜなら富裕層の半分を占める公務員は収入を公開したくないからだ」と踏み込んだ。
パネルディスカッション「映画フェイチェンウーラオによるフィルムツーリズムはインバウンド市場創出に有効か」では徐社長に加えて同映画の宇崎逸聡プロデューサーがパネリストとして登壇。3週間足らずで興行収入3億元(約41億円)を上げ、DVDを含め1億人以上が見たといわれる同映画をなぜ北海道で撮影したのかについて「もともと中国では文化大革命の頃に日本映画が映画館で放映され、40〜50代の映画監督には日本の文化、景観が強く印象づいている」と明かした。
シンポジウムのコーディネーターを務めた富士の渡邊竜一取締役は「観光で行ってみたい国として中国人の30%が日本と答え、その中でも59%が北海道と答えている」と補足した。
「HI 日本」会報誌を紹介する眞柄社長