山梨県が設置した富士山登山鉄道構想検討会は2日、参院議員会館で理事会(理事長・山東昭子参院議長)を開き、構想の素案について有識者で構成する理事会の出席者から意見を聞いた。安全性や収益面など出席者から指摘があった部分を調整し、来年2月上旬をめどに検討会の総会で最終案を提示、決定する方針だ。
富士山の登山鉄道構想は、山麓から五合目までのアクセス交通を現行の自動車から自然環境への負荷が少ないとされる鉄道へ転換するための可能性を探ろうと県が検討しているもの。
2013年の世界文化遺産登録後、特に五合目を訪れる観光客が増え、自動車からの温室効果ガスや大気汚染物質の排出量が増加。世界遺産委員会とイコモス(国際記念物遺跡会議)からは対策や改善が必要とされていた。
構想の素案では、山麓から五合目まで、既存の有料道路「富士スバルライン」上に線路を敷設、1編成120人乗りのLRT(路面電車)を運行する。総延長25~28キロで、所要時間は上りが約52分、下りが約74分。車内では食事や飲み物、映像を使ったガイダンスの提供など、乗ること自体が楽しめるよう工夫を凝らす。料金は往復1万円で、年間利用者数約300万人を見込む。
県の担当者は雪崩対策や初年度からの黒字を見込む試算を示したが、出席した一部の理事が問題点を指摘。県側で今後、中身を再検討する。
有識者の理事には坂井究氏(JR東日本常務)、デービッド・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長)、島田晴雄氏(東京都立大学理事長)らが名を連ねている。
会議後の取材で県の長崎幸太郎知事は「富士山は日本全体の宝であり、山梨県にとってもキラーコンテンツだ。未来永劫(えいごう)、多くの人に愛され続ける場所にするため、今までの(アクセスの)やり方を変えていかねばならない」「技術や費用をしっかり精査して、2月の総会に向けて案をブラッシュアップしたい」と述べた。
理事会であいさつする山梨県の長崎幸太郎知事