富裕層の誘客に挑む 高付加価値なインバンド観光地づくり モデル11地区がマスタープラン


モデル地域による事業報告会

 観光庁は、海外富裕層などのインバウンド高付加価値旅行者を地方に誘客するモデル観光地づくりを推進している。全国から選定された11のモデル地域はこの1年をかけ、滞在価値、体験コンテンツ、宿泊施設、人材などの観点から、総合計画であるマスタープランの策定に取り組んだ。2月16日に東京都内で開催された事業報告会では、世界に通用する地域独自の滞在価値、DMC機能を含めた推進体制など、各モデル地域が目指すべき地域づくりの方向性を発表した。2024年度からは、施策の具体化に入り、実証事業や体制整備がスタートする。

■モデル事業

 観光庁は、1人1回当たり着地での消費額が100万円以上の旅行者を「高付加価値旅行者」として地方誘客の拡大を目指している。23年3月にはモデル地域11カ所、継続検討地域3カ所を選定。世界に通用する地域独自の滞在価値、体験価値を指す「コアバリュー」を重視した取り組みの支援を開始した。地域に必要な課題や取り組みは、ウリ=魅力的なコンテンツ、ヤド=上質な宿泊施設、ヒト=送客・ガイド・ホスピタリティなどの人材、コネ=海外とのネットワーク、アシ=交通などのカテゴリーに分けて整備を促している。

 モデル地域は、東北海道▽八幡平▽那須・周辺地域▽松本・高山▽北陸▽伊勢志摩・周辺地域▽奈良南部・和歌山那智勝浦▽せとうち▽鳥取・島根▽鹿児島・阿蘇・雲仙▽沖縄・奄美。継続検討地域は、山形▽佐渡▽山梨富士山麓。

 モデル地域は23年度に、コアバリューの特定、地域経営主体の構築、マスタープランの策定に取り組んだ。報告会では、継続検討地域を含む14地域全てがプレゼンテーションを実施した。このうち3地域の主な発表内容を紹介する。

■松本・高山

 中部山岳国立公園の南部地域をはさみ、長野県、岐阜県にまたがる松本・高山エリアは、「松本高山Big Bridge構想実現プロジェクト」という観光圏構想を契機に、松本市街地、高山市街地、山岳エリアをコアゾーンとして、高付加価値旅行者の誘客を目指す。

 協議会を設置してマスタープランを検討。コアバリューには、「自然と文化の循環が調和する、包括的な社会循環システムが息づく松本・高山」を掲げた。北アルプスと都市、自然と伝統文化の調和、共生を体験する旅の提案を目指す。

 コアバリューに根差した滞在コンテンツや宿泊施設の整備などを推進する。地域経営主体では、官民連携によるマネジメント組織体、ランドオペレーター機能を持つDMCの構築などを将来構想に位置付けている。

 協議会の名古屋鉄道、若江翔平氏は「ウリ、ヒト、ヤドなどカテゴリーごとに特化して取り組むべき課題が山積みだが、どのカテゴリーにも共通しているのが、松本・高山のつながりを可視化し、共有し、発信する仕組みの実装だ。松本・高山という一つの観光圏としてブランディングする上で、一体的な取り組み、エリアごとの取り組み、個社の参画を促す取り組みに分けて具体の事業化を進めていきたい」と報告した。

■伊勢志摩

 三重県の伊勢志摩地域は、コアバリューを「格別のお宮である『伊勢神宮』に代表される承継の精神」として、「日本の心のよりどころ」を承継する営み・暮らし全般を地域の中心的な価値に位置付けた。コンテンツ調査の結果などを踏まえ、戦略的に磨き上げる素材には、伊勢神宮を巡るプログラム、伊勢志摩国立公園の自然体験、海女小屋体験や海女との交流などを選定する予定。

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