フランス・カンヌで12月4〜6日に開催される富裕層向けの世界的な旅行博「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット(ILTM)」の公式オープニングパーティー「ジャパンナイト」の概要がこのほど、実行委員会(委員長=石森秀三・北海道大学観光学高等研究センター長・教授)や経済産業省、国土交通省から発表された。贅と美を尽くした「本物」の伝統文化にこだわり、京都、金沢を中心に日本をアピール。建仁寺所蔵の国宝「風神雷神図屏風」を展示するほか、京都祇園の芸妓の舞や石川県に伝わる御陣乗太鼓を披露、料理のデモンストレーションや茶会も開く。
ジャパンナイトは、ILTM主催者と日本政府の共催。4日夜、カンヌ国際映画祭の公式パーティーなどでも使用されている会場で開かれる。ILTMには過去にも日本企業の出展はあるが、経産省などが支援して、旅行会社などが出展する「日本エリア」を設置するのは初めて。これに合わせた企画で、公式パーティーが1つの国との共催で開催されるのも前例がないという。
日本の文化やもてなしなど、通常の旅行では触れるのが難しい本物の和の魅力を富裕層に向けて発信、会場での体験を通じて、訪日旅行への関心を高める。旅行バイヤー、メディア、出展者など約3500人の参加を見込んでいる。
会場のメーンゾーンでは、舞や太鼓、日本料理のデモンストレーションを披露するほか、モニターでは京都、金沢を中心に日本の魅力を映像で紹介する。「絢爛・雅」ゾーンでは京都高台寺による桃山茶会、「絢爛・粋」ゾーンでは加賀蒔絵と宝飾の展示などを行う。
ILTMは今年で7回目の開催。主催者が選定したバイヤー、出展者だけが参加、期間中には約4万3千件の商談が繰り広げられる。出展者はランドオペレーターやコーディネーター、宿泊施設、プライベートジェットの運航会社など約1100社に上る。
世界市場にアピール 受け入れ整備も促進 実行委が会見
14日都内で開かれたILTMジャパンナイト実行委員会、経済産業省などによる記者会見で、石森委員長は「日本にとって富裕層旅行は未開拓の市場。受け入れ態勢も十分整っているとは言えないのが現状だ。海外へのアピールと同時に、国内の民間企業や地域の取り組みを促す契機にしたい」と意欲を示した。
世界には金融資産100万ドル以上の「ラグジュアリー層」と呼ばれる人口が870万人いるとされ、2010年には1千万人に達すると言われる。欧米などには富裕層を顧客とした旅行会社やコンサルタントサービス組織があるが、日本は誘致に向けたプロモーション活動、受け入れ態勢の整備に関して立ち遅れが指摘されている。
石森委員長は「海外富裕層の日本への潜在的な旅行意欲の高さはこれまでの調査で裏付けられている。富裕層市場で日本は『眠れる獅子』と言える。ジャパンナイトの開催は、国内に対しても、世界に対しても市場開拓への意思表示として大きな意味がある」と語った。
実行委員会のメンバー、高台寺圓徳院住職で京都観光大使を務める後藤典生氏は「文化の宝庫である京都を世界に発信したい。富裕層の誘致に官民を挙げて戦略的に取り組もうと考えており、ジャパンナイトに対する期待は大きい」と語った。
石森委員長(右)と委員の高台寺圓徳院住職・後藤氏