岩手、静岡、長崎、沖縄の4県は今年度、全国に先駆けて「地域限定通訳案内士」の試験を実施する。地域限定通訳案内士は、報酬を得て外国人旅行客の通訳と観光ガイドができる国家資格「通訳案内士」の言わばローカル版。活動区域は都道府県ごとに限定されるが、地域での人材確保に期待が大きい。4県では、外客来訪促進法の一部改正で制度化された、この新資格を全国で初めて活用、外客の受け入れ態勢の整備に努める。
都道府県が、地域限定通訳案内士の制度を導入するには国の同意が必要。4県からの申請を受けた国土交通省は16日、各地区の外客来訪促進計画の変更に同意し、資格試験の実施を認めた。
全国を活動区域とする国家資格では10言語が対象となっているが、4県では今年度、英語、中国語、韓国語の3言語で試験を実施する。試験内容は、志望する外国語に加え、各県の地理や歴史、文化、産業などの知識。筆記と口述の試験を行う。
外国語の筆記試験は、当面、区域制限のない国家資格の通訳案内士と同じ問題で日程も同時に実施される。併願受験も可能。地理や歴史などの問題は、出題範囲が該当の都道府県に限定されることから、取得者の増加が見込まれる。
沖縄県は21日から願書の受け付けを開始、9月1~2日に第1次試験にあたる筆記試験、12月上旬に第2次試験にあたる口述試験を実施する。静岡県は、25日に試験概要を公示。他の2県も近く公示する。
通訳案内士の免許取得者数は、10言語合計で1万人を超えてはいるが、都市部に対し、特に地方で人材不足が目立つ。
静岡県内の通訳案内士の免許取得者は、3言語でみると、英語80人、中国語11人、韓国語3人にとどまる。県観光コンベンション室は「外客1千人に対し通訳1人の確保を目安とした場合、外客誘致の目標数から10年にはこの3言語で300人以上が必要となる。09年3月の富士山静岡空港開港を控え、外客の拡大が期待される。地域限定の新制度を周知し、資格者を増やしたい」と前向きだ。
長崎県でも3言語の免許取得者は、英語34人、韓国語2人、中国語1人。県観光振興推進本部は「外国客船の入港の際など、一度にたくさんの通訳案内士が必要となる機会も多い。長期的な計画で人材を確保していきたい」と話す。
岩手県は、中尊寺をはじめとする平泉の世界遺産登録を視野に入れ、地域限定通訳案内士の確保を進めたい考え。沖縄県も観光立県として外客の増加を目指し、新制度を導入することにした。