東日本大震災の被害で休止していた岩手県田野畑村の北山崎観光船クルーズの運航が、「海の日」の7月21日に再開する。津波で流失した発着施設を再建し、新しい観光船を建造中だ。「三陸ジオパーク」の構成資源で、陸中エリア屈指の景勝地と言われる北山崎の断崖を洋上から見ることができるクルーズ。観光の活性化が期待され、地域の復興を後押ししそうだ。
断崖や白亜紀地層群に加え、復興する村の様子が見られるクルーズ。震災前は「北山崎めぐり観光船」として運航していたが、再開に合わせて名称を「北山崎断崖クルーズ」に改める。第3セクターの株式会社、陸中たのはたが運航する。
三陸鉄道の全線運行再開を追い風に、村の体験プログラムである小型漁船によるクルーズ「サッパ船アドベンチャーズ」、震災や防災を学ぶ「大津波語り部ガイド」とともに、観光船クルーズをPR。田野畑村政策推進課では「各プログラムともガイドの内容を充実させ、さらなる観光誘客につなげたい」としている。
観光船は、震災発生時に船員が沖合に避難させて無事だったが、老朽化していた上、約3年に及ぶ係留で大幅な修繕が必要なことから新造する。岩手県山田町が震災復興に向けて広島県から誘致した造船会社で建造中。
新造船は全長が約22メートル、総トン数が19トンで旅客定員は92人。陸中たのはたの所有で、建造費は1億3千万円、うち9千万円を村が補助。船名は住民に募って決める。運航時間の詳細は未定だが、クルーズ1回当たりの所要時間は約50分。
新しい発着施設は完成している。場所は震災前と同じ島越漁港。2階建ての建物で、発券カウンターや待合室、土産品売り場などを備える。整備には国の復興交付金を活用し、事業費は1億3千万円。
発着場所まで徒歩5分の三陸鉄道の島越駅の駅舎も7月末ごろに完成が見込まれており、観光客の受け入れ態勢がさらに整う。
就航する新造船のイメージ