観光庁が実証事業で4施設支援
新型コロナウイルスの世界的な流行で、多くの参加者が集まるMICEの開催において感染症対策が必須の取り組みになっている。観光庁は、今後のMICEの誘致促進に向けて、国際的な第三者機関がMICE施設やホテルを対象に実施している衛生対策の認証制度について報告書をまとめた。2020年度の実証事業として国内の国際会議場など4施設の認証取得を支援し、取得のための実践的なマニュアルなどを作成した。国内のガイドラインや認証基準の活用の一方で、国際的な認証を取得して衛生対策、感染症予防対策の高さを国内外にアピールする取り組みとして注目される。
観光庁は、国際的な機関による衛生対策の認証制度として、国際的な清掃業界団体の下部委員会、グローバルバイオリスク委員会による「GBAC STAR」、19世紀に設立されたフランスの認証企業のビューローベリタスによる「SAFEGUARD」などを紹介している。
GBAC STARは、北米の国際会議場やコンベンションセンターが多く取得している。海外ではHyattグループなど、国内では帝国ホテル東京、ホテルオークラ東京、パレスホテル東京などが取得。MICE分野の国際的な団体、ICCA(国際会議協会)などの業界団体とも連携している。
SAFEGUARDは、ホテル業界で普及が進んでいる。シンガポールのマリーナベイサンズ、国内では京王プラザホテル、グランドニッコー東京台場、アスコット丸の内東京、庭のホテルなどが取得。ACI(国際空港評議会)、プリファード ホテルズ&リゾーツなどの国際的な団体と連携している。認証実施企業は、日本法人も開設している。
主な認証制度を比較した上で観光庁の報告書は、「GBAC STAR、SAFEGUARDとも、十分に国際的な知名度を持っていると考えられ、取得対象制度としていずれも適切であると言える」と評価している。
実証事業では、参加施設の意向を確認した上でGBAC STARの取得を支援した。認証取得に取り組んだのは、国立京都国際会館(京都市)、パシフィコ横浜(横浜市)、東京ミッドタウンホール&カンファレンス(東京都港区)、ザ・リッツ・カールトン東京(同)。観光庁が必要な助言を行い、認証取得にかかる費用などを負担した。
GBAC STAR認証の取得に当たっては、GBAC STARが提供する感染症(新型コロナウイルス)に関するオンラインコースを受講し、修了テストに合格する必要がある。講義とテストの主な内容は、新型コロナの基礎知識、感染予防、感染拡大の防止処置など。
さらに、施設における感染症対策をまとめた書類の提出が求められる。GBAC STARが定める20項目に対応した書類が必要で、主な項目は、▽組織における役割、責任、権能(経営、現場への対策を主導する責任者の配置など)▽感染リスク管理と低減策(継続した感染リスク管理やリスクの排除、低減策など)▽標準作業手順書(清掃、消毒、感染防止に関わる標準作業書の作成など)▽清掃・消毒薬品(清掃、消毒への適切な薬品の使用など)▽人材育成(衛生に関するトレーニングなど)▽緊急事態に対する備えや対応―など。
GBAC STARの認証審査では提出書類について、各施策への明確な基準や体制が文書として整理され、定期的な見直しが行われることが重視されるという。提出書類は英語で用意する必要があり、審査には通常4~6週間程度かかる。観光庁は、提出書類の作成に関してマニュアルを策定し、ウェブサイトで公表している。
観光庁は、GBAC STARをはじめとする国際的な認証の取得に関して、「施設や組織の特性、営業戦略、維持経費を総合的に鑑みて、自施設のニーズに最も合致した国際衛生認証の取得を推奨する」と提言。認証の選択や取得では、海外MICEの動向に詳しいPCO(運営事業者)などの助言を受けることも効果的で、代理店の支援を活用することも選択肢の一つとしている。
観光庁は、GBAC STARの認証取得のプロセスや申請書類などについて報告書
(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001398836.pdf)で解説している。