高齢者観光の新たな移動手段に
小型、軽量電動カートを取り扱っているNOAA(東京都中野区)は、同社の携行型小型電動カート「NOAA MOBILE―XPlus」とタクシーを連携させた取り組みを推進している。高齢化を迎える日本の観光における新たな移動手段を提案し、高齢者を中心とする観光客の移動範囲を広げ、外出機会を増やすとともに、コロナ禍で落ち込むタクシーの平日利用の回復、促進も図る。観光庁による「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」の「交通連携型」実証実験の一環。
電動カートで降車する様子
同社は高齢者の行動に関する潜在意識について、「運転免許証返納後、移動に対してのモチベーションがなくなり、外出が少なくなりがちである」「観光地で巡りたいスポットは多々あるものの、現地での歩行がおっくうになり、行動範囲が狭くなりやすい」と分析、「高齢者のお出掛けのアシスト」を主な目的として同商品を開発した。
実証実験では、移動に係る部分について、タクシー会社と連携。他の世代と比較して平日の観光関連移動が多い高齢者世代と、平日昼間の需要が少なくなるタクシーとが相互的につながることで地域観光の活性化とタクシーの積極的活用を目指す。
兵庫県内でタクシー事業を展開する近畿タクシー(神戸市長田区)と行った実証実験「観光タクシー2.5」には、陶泉 御所坊(兵庫県有馬温泉)や神戸観光局なども参画。
JR新神戸駅を起点に、参加者は三宮元町神戸界隈のスイーツ店やパン店、六甲オルゴールミュージアムや高山植物園、異人館などの同市内の観光施設をタクシーで巡り、降車後には携行しているNOAA MOBILE―XPlusで各スポットへと移動した。
タクシー車載中のNOAA MOBILE―XPlus。重量は約20キロほどで持ち運びに便利なサイズ感に仕上がっている
同社専用ウェブサイトを構築し、参加者から募ったアンケート結果などを踏まえ、高齢者をはじめ、足腰に不安を抱える人にも気軽に街歩きを満喫してもらえるプランへと磨き上げていく。他の地域でも同様の実証実験を行いながら、「徒歩による周遊観光を諦めない旅」の提供を目指し、「小型電動カートを利用した2・5次交通」の充実を推進する。
NOAAの西原基成事業本部長は、高齢化が進む日本の観光で同製品が果たし得る役割について「MOBILE―XPlusは競合他社の製品と比べて軽量ながら、価格も抑えている。シンプルな構造なので組み立て、収納も簡単。ご高齢の方々の観光周遊をアシストできればうれしい」と期待を寄せ、「各地のタクシー需要と観光需要の掘り起こしに貢献できる」と展望する。