旅行業界と連携して販促 都市観光も体験型に変化
――サンフランシスコ観光協会はどのような組織か。
「サンフランシスコとベイエリアを、コンベンション、ミーティング、イベント、レジャー旅行の最高のデスティネーションとして世界にアピールする活動を行っている。サンフランシスコ市の公式なデスティネーションマーケティング組織だ」
――日本市場をどのようにとらえているか。
「2019年の日本からの訪問人数は13万6千人、支出(現地消費)額は2億6600万ドル。22年は同2万2千人、同5200万ドルだった。23年については、期待を込めて7万2千人、1億2900万ドルと予測している。また24年は、17万1千人、2億5600万ドルの目標を掲げている。24年は19年より多くの日本人訪問者数を目指している」
「現在、東京(羽田)―サンフランシスコ間は、ユナイテッド航空、日本航空、全日空が直行便を運航している。ユナイテッド航空は大阪(関空)にも就航している。またZIPエアーが東京―サンフランシスコ間の直行便を6月2日から週5便飛ばす。日本は5月8日に新型コロナの感染法上の位置づけを季節性インフルエンザなどと同じ『5類』に移行する。両国間の双方向交流にとってうれしいニュースが続いている」
「ユナイテッド航空、OTAと組んで、サンフランシスコ観光の販促キャンペーンを5月下旬から開始する。ビジットカリフォルニア(カリフォルニア観光局)、ブランドUSA(米国の公式外国人旅行者誘致機関)、日本のリアルエージェントとも密に連携していく。私たちが日本の消費者に直接訴求することは難しい。日本の観光業界の皆さまのお力添えが必要だ」
――同キャンペーンに参加するのはどのOTAか。
「トリップ・ドットコム、エアトリ、スカイチケットの3社。別途、ZIPエアーの就航に合わせた連携キャンペーンも計画中だ」
――サンフランシスコ観光協会は、全米の観光協会・DMOのモデルとなる資金調達手法を開発したと聞いている。活動資金の調達、捻出には日本の観光協会・DMOも苦労している。
「以前は私たちも活動資金の全てを国や地方政府、都市からの補助金などの公的資金で賄っていた。行政に頼りきっていたため、年度によって波があり、一貫性のある資金調達ができずにいた。また、私たちが仮に行政側と異なる意見を持っていたとしても、それをきちんと打ち出せる協会にしたいとも考えていた。そこでサンフランシスコ観光改善地区(SFTID=サンフランシスコ・ツーリズム・インプールーブメント・ディストリクト)を08年に開発。サンフランシスコのホテル宿泊者から、通常の宿泊税とは別に1.5%の費用を徴収し、私たちがサンフランシスコの観光振興のために使える資金とする仕組みを09年から導入した。現在、カリフォルニア州では100以上の都市の観光協会、DMOが同様の資金調達モデルを採用している」
「09年の私たちの予算は1千万ドルだった。そして19年には4400万ドルまで増加した。22年は3300万ドルだった」
――コロナ禍でサンフランシスコの観光業界はどのように変化したか。
「19年のホテルの平均稼働率は92%を記録していたが、23年は、現在までのところ70%程度。観光客は戻りつつあるが、コロナ禍で観光業界を去った人たちは戻ってこず、人手不足が続いている。特にレストランの人手不足は深刻だ」
――旅行スタイル、滞在スタイルの変化は。
「ゴールデンゲートブリッジを渡るサイクリング、プレシディオ公園でのヨガ体験など、都市観光もアウトドア、体験型の人気が高まってきている。サンフランシスコは歩ける街だ。ぜひアーバンハイキングを楽しんでほしい」
――ところで、日本のカニを食べたことはありますか。フィッシャーマンズ・ワーフのカニとどちらがおいしかったですか。
「私は40年前から日本に通っているので、もちろんある。日本のカニは日本で食べるのが一番おいしいし、ダンジェネスクラブはサンフランシスコが良い。名物料理はその土地で食べるのが最高だ」
Joe D’Alessandro 1991年~2006年、ポートランド・オレゴン観光協会プレジデント兼最高経営責任者。06年、サンフランシスコ観光協会のプレジデント兼最高経営責任者に就任。以来、10年以上にわたって同市を訪れる観光客増加の記録を更新し、協会をけん引。19年に5億5100万ドルを投じて完成したモスコーン・コンベンションセンターの改装と拡張工事も指揮した。
【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】