国のキャンペーンに協力、観光振興に貢献
新型コロナウイルスの感染拡大で観光業界はかつてない苦境に立たされている。業界団体はどう対応し、事業者を守るのか。日本観光振興協会の久保成人理事長に聞いた。【聞き手=本社・内井高弘】
――観光業界の現状をどう捉えているか。
「新型コロナウイルスの世界的まん延により人的交流が激減して、インバウンドはもとより、国内旅行、海外旅行も極めて大きな打撃を受け、観光関係従事者は瀕死の状態だ。従来であれば、特定の地域が旅行できない環境であっても、別の地域では旅行が可能な環境だったが、新型コロナの感染拡大は、日本国内はもとより、世界中全ての地域において感染拡大がみられるため、世界中ほぼ全てで移動の制約がある状況だ」
「政府により、事業や雇用継続のための緊急対策が迅速に打ち出されたことは一定の評価ができる。しかし、各方面の自粛がさらなる観光需要の低迷を招き、収束への出口も見えないため、全ての事業者が不安を抱えている」
「収束が見えない中では従来型の観光施策を実施する意味に乏しく、また実施できる状況にもない。国民の健康と安全は全てに優先されることはもちろんだが、感染防止と社会経済活動を両立させていくことも必要であろう」
――日観振はどう取り組んできたか。
「会員からの意見聴取、業界関係者との意見交換・調整を行い、政府への要望を行った。具体的には、2月21日に日観振緊急要望を観光庁に提出、3月2日に自民党観光立国調査会ヒアリング出席、同27日には感染症拡大に伴う観光関係の要望をした」
「感染予防対策については、2月10日に事業の実施方針を出し、中旬以降は会議、イベントの延期・中止に対する迅速な決定を行ってきた。また、職員に対しては手指のアルコール消毒、時差出勤、テレワークの実施など可能な限り取り組んできた」
――取り組みの成果はあったか。
「要望の中で『感染症緊急経済対策』や『令和2年度国土交通省関係補正予算』に反映されたものと考えている。感染予防については、協会内部として、政府の求めるテレワーク率7割以上を達成し、現時点では緊急連絡対応など必要最小限の職員や、決算などでやむを得ず出勤せざるを得ない職員のみ出勤としている」
――今後の対応は。
「当面は収束に向けて国民の一員としての行動が求められるとともに、国の緊急融資、雇用調整助成金などの活用により、観光の諸リソースが収束後にまで存続されるよう努める。さらに、支援が事業者に届き、実効性のあるものとなるよう努める」
「収束が見えてきた場合、国(観光庁など)の講じる国内観光を中心としたV字回復キャンペーンなど、国、民間、地域が一体となって取り組む状況になると考えられ、協会の役割が増大すると見込んでいることなどの観点から、20年度事業については、現時点では継続事業などの一部を除き、一時保留とし、状況に応じて対応する」
「この状況下で何ができるのか、あるいは今後の状況を注視しつつ、少しでも早く、安全に、観光復興に向けた活動を行うことを検討しており、収束後早急に事業展開できるよう対応する」
――会員へメッセージをいただきたい。
「観光産業としては非常に困難な状況にあることは間違いないが、明けない夜はない。まずは観光産業全体で働く人を含め、日本と世界が健康と安全を確保することが観光産業復興に向けた第一歩であると考える」
「協会ではコロナ禍の収束が見えた後、国が実施するキャンペーンなどに協力を行うことで、コロナ後の観光復興に積極的に貢献していきたい。会員である観光産業、そして地域の皆さんの声をまとめ、それを国策に反映させていただくことで、日本の観光産業全体に貢献していく」
「大変な時期ではあるが、観光産業はもちろん、観光に関連した産業を含めてスクラムを組んでこの国難に立ち向かっていきたいと考えており、会員の皆さんのご理解とご協力をお願いしたい」
久保理事長