旅行アプリにAIを実装 Trip.Comインターナショナルジャパン代表取締役 高田智之氏に聞く


Trip.Comインターナショナルジャパン代表取締役 高田智之氏

「パーソナライズ」が鍵 旅程を作成・予約・共有

 ――AIは今後5年間で旅行業界にどのような影響を与えると予測されていますか。

 「AIは旅行者の好みに基づくパーソナライズをさらに高度化し、個々人の興味、関心、趣味、嗜好に応じた旅行提案を実現していくだろう。パーソナライズのレベルは各段に上がり、個人の旅の嗜好を把握した上で、細かいニュアンスの違いさえ感じさせないレベルの提案をするようになると思う。予約機能だけではなく、旅行に関するコンテンツのパーソナライズ化も進むことになる。旅行を検討する段階から、それが旅行体験の一部となるようなコンテンツドリブンの体験が増えていく。AIにより旅行計画全体を簡単に無料で作成できるようになった。旅先を決める際の新たな検討方法になりうるだけでなく、旅行業界全体の生産性とサービス品質を向上させる鍵となる可能性がある」

 ――トリップドットコムが2023年7月に導入したAIトラベルアシスタント「トリップジーニー(TripGenie)」は、ユーザーのエンゲージメントや満足度向上にどのように貢献していますか。

 「トリップジーニーには、ユーザーの過去の行動データや検索履歴をもとにパーソナライズされた旅行提案を行う機能がある。これまでの業界トレンドは、3クリックでの予約完了など予約の効率化だったが、新しいキーワードはパーソナライズだ。これにより、さらにユーザーエンゲージメントが高まり、結果として顧客満足度の向上につながっている」

 ――具体的には。

 「旅行計画の効率化が実現し、再訪率が30~40%向上。滞在時間も伸び、成約率は2倍になった。トリップドットコム・アプリは、ユーザビリティの向上を徹底的に追求している。一つのプラットフォームで、交通・宿泊・アクティビティ等の予約をシームレスに完了できる従来からの特長に、無料で旅程作成ができ、同行者と共有もできるAIトラベルアシスタント機能が加わったことで、ユーザーにとってベストな選択肢を提供できる仕組みへと進化した」

 ――トリップジーニーは今度どのように進化していきますか。

 「多言語対応の強化とデータ分析精度の向上に努めている。自社データベースからデータを提供し、より精度の高いAIへと日々進化させている。不断の改善によりAIの精度はどんどん上がっていく。今後は、ユーザーが知りたいと思っていることを予測して提案したり、ユーザーの潜在需要に気付いてお知らせし、それらが自然な形で旅行消費につながっていくような一連のプロセスの提供を実現したい」

 ――トリップドットコムの企業全体では、AIをどのように活用していますか。

 「一例を挙げると、多言語対応のカスタマーサポートの強化と最適化に使っている。カスタマーサポートへの問い合わせが増える予兆に対して、的確なアナウンスを行うことで、問い合わせの傾向を把握し、必要な人的リソースを必要とする箇所に配置することが可能になっている。これは、特に地震や台風などの発生時に威力を発揮している。人が提供することでサービスが高まる分野と、AIが得意とする分野がある。この見極めが大事だ。AIを上手に使い、人的リソースを人でしかできないサービスやより高度な感動を生み出す仕事にシフトさせていくことで、全体最適化が実現する。AIは、業務の効率化とサービス向上を通じて、旅行業界全体の進化に寄与するものだと思う」

 「AIは当然マーケティングにも活用している。AIデータを使ってより細かなユーザー動向を把握、分析している。また、顧客フィードバックを迅速に取り入ることで、サービスの利便性と使いやすさを向上させ、満足度を高めるのにも役立っている。AIデータにより、他社に先駆けて市場傾向を理解し、新商品や新サービスを投入することでリーダーシップを取ることも可能になってくる」

 たかた・ともゆき氏 1984年徳島県徳島市生まれ。07年にタイのホテルチェーンに入社し、主にタイ国内工業団地近郊のホテルの立ち上げに携わる。10年ハイアット・オン・ザ・バンド上海入社。その後も旅行業界で活躍し、国内外で営業戦略の立案と実行を推進。東日本および西日本地区での事業成長をけん引した。22年トリップドットコム・インターナショナルトラベルジャパン・ホテル営業部カントリーディレクターを経て、23年同社代表取締役社長に就任。24年トリップドットコム・エアチケッティングジャパン代表取締役社長就任(兼務)。

【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】


Trip.Comインターナショナルジャパン代表取締役 高田智之氏

 
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