全国の温泉、観光地の旅館・ホテル経営ノウハウに定評があるリョケン(静岡県熱海市、佐野洋一社長)は15、16の両日、滋賀県彦根市の彦根キャッスルリゾート&スパで通算153回目の「旅館大学セミナー」を開いた。全国の旅館・ホテル経営者、幹部社員ら約100人が参加。一圓興産の一圓泰成社長が、同施設を経営する大胆な経営の戦略転換を図ってきた業態転換の決断について講演を行った。
リョケンの佐野社長は一圓社長の講演に先立ち、「同社は経営の勇気、考え方のよりどころをわれわれに与えてくれる」とあいさつした。
一圓興産は市場の動向、顧客層を見据え、ドライブイン事業からビジネスホテルに業態を転換。昨年にはリーマン・ショック後、価格のみの競争を強いられてきた状況を打破するため、宴会場を大浴場に作り変え、彦根城に面した部屋は2室を1室にして半露天風呂付きの客室を作るなどの改装を行い、リゾートホテルとしてリニューアルオープンした。
客室数は55室から52室に減少したもの、宿泊定員は78人から84人に増加、宿泊単価は約3千円増、宴会単価は約1500円増加したと報告。
一圓社長は「目指すのは変化し続けること。社長として未来創造業という気概で未来を描き続ける」と講演を締めくくった。
2日目は観光資源を集客に生かす取り組みの実例についてリレー講演が行われた。
越後湯沢温泉の松泉閣花月若女将の富井智子さんは、地域の魅力を発信するため、自ら観光バスガイドとして活躍。スタッフのやる気を向上させるために取り組むコンシェルジュブック(スタッフ手作りの観光案内)作りについての事例を紹介した。今後の課題として「宿泊プランに組み込みやすい観光バスのコース作り」が必要と強調した。
鹿教湯温泉の斎藤ホテル専務の和田美徳さんは、平均滞在泊数2.7泊を実現した着地型観光ツアーのビジネスモデルを紹介。同ホテルでは心の健康促進のために信州の観光資源を活用したツアーを行っている。日帰りツアーでは県外にまで足を伸ばすこともあると説明した。
最後は彦根観光協会の会長も務める一圓社長が彦根の人気キャラクター「ひこにゃん」の波及効果やロケーション誘致など地域戦略の考え方について講演を行った。
次回のセミナーは12月17、18日に栃木・鬼怒川温泉のきぬ川スパホテル三日月で開催する。
あいさつする佐野社長