全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、北原茂樹会長=京都市・旅館こうろ)は8日、東京の京王プラザホテルで「無許可宿泊施設撲滅総決起大会」を開いた。全国の旅館・ホテル組合員ら約千人が参集。営業許可を受けない違法な民泊の取り締まり強化や、新法での解禁が議論される民泊の年間営業日数を最大30日に制限するなど、8項目のスローガンを採択、集まった国会議員らにアピールした。
1時間にわたる大会では、冒頭、北原会長が12分間演説。「国民に安心、安全な宿泊施設をどう提供するのか。違法民泊をどう排除するのか。そのための決起大会だ」とした上で、「現在、違法に行われている民泊を、まずはしっかりと摘発し、取り締まるべきだ。悪貨が良貨を駆逐するということがあってはならない」「2日に閣議決定された規制改革実施計画は、民泊営業を年間180日以下の適切な日数にするというものだが、180日程度では個人がやるというよりも完全なプロのビジネスで、われわれと何ら変わらない。それならば今の旅館業法に基づく、最も基準が緩い簡易宿所の営業許可を取ればいいのではないか」「営業日数が制限されても、行政の人たちが毎日現場を見て回ることができるのか。実効性のある仕組みを作る必要がある」などと述べた。
自民党生活衛生議員連盟、観光産業振興議員連盟を中心に、衆参の国会議員、秘書ら約50人がかけつけた。生活衛生議員連盟の伊吹文明会長は「将来の規制緩和の話をする前に、まずは現状を考えるべきだ。京都市の調査では、90数%の民泊が市の許可を受けずに営業している。日本は法治国家だ。90数%が法律を守らない現状を放置しておいて、新たな規制緩和の議論に進むこと自体がおかしいのではないか」「旅館・ホテルの皆さんは、それぞれ地元の県会議員、市会議員、県警本部に掛け合ってほしい。違反をしっかりと取り締まる。そして地域のために必要な条例を作ってもらう。まずは身近な、できることから始めてほしい」と述べた。
ほかの議員らも「宿泊業は人の命を預かる商売だ。簡単な営業許可ではいけない」「旅館・ホテルは安心、安全に多くのコストをかけているが、民泊は不要だという。こんなに不公平なことはない」「旅館・ホテルが足りないという話から、空き家対策に話がすり替わっている」「東京オリンピックで客室が足りなくなるというが、それなら期限を切って民泊を提供すればいい」と、旅館・ホテル業界を支援する発言を行った。
全旅連青年部の桑田雅之部長(長野県・菅平高原温泉ホテル)は、民泊がテロの実行犯に利用されていたことや、ホテルのベッド数が11万床、民泊のベッド数が22万床と、民泊の収容能力がホテルを逆転したフランス・パリの事例を紹介。1月に発生した長野県でのバス事故も例に、急激な規制緩和を行うことに警鐘を鳴らした。
最後に桑田部長は「民泊の営業日数は年間30日とすべし」「無許可宿泊施設の取り締まりを強化すべし」など8項目のスローガンを朗読。「われわれの子供や家族、従業員を守るために、全員で一つになって戦いましょう。がんばるぞ」と会場全体でシュプレヒコールをあげた。