旅館販売を重要視 アゴダCCO(最高商務責任者) ダミエン・フィルシェ氏に聞く


アゴダCCO(最高商務責任者) ダミエン・フィルシェ氏

JTBと相互補完関係 世界中で現地化を推進

 ――アゴダとJTBとの戦略的パートナーシップの現状は。

 「JTBとアゴダは過去7年間にわたって非常に強力なパートナーシップ関係を継続してきている。JTBの強みは、日本市場に対して深い知識と経験、関係性を持っているということ。特に旅館との深い絆だと認識している。アゴダの強みはテクノロジーとオンラインマーケティング。両社は相互に補完的な関係にあるパートナーだ」

 ――グローバルOTAの日本市場におけるプレゼンスが年々上昇している。インバウンド客を 日本に送ってくれるOTA、日本人が海外旅行するときに便利で使いやすいOTAといった存在から、日本人の国内旅行予約にも使いやすいOTAに確実に進化している。アゴダとJTBのるるぶトラベルは競合サイトになるのではないか。

 「JTBを競合とは考えていない。旅行市場は、パイを奪い合うほど狭いマーケットではない。お互いの強みを生かして、助け合い、共に成長していくことを目指している」

 ――JTBに提供していること、JTBから学んでいることは具体的に何か。

 「るるぶトラベルとインバウンド予約サイトのジャパニカン・ドットコムに対して、ユーザーが接するフロントエンド(UI、UX等)と旅館・ホテルと接続しているバックエンド(データベース、プログラム、モジュール等)への技術サポートをさせていただいている。ビッティング(ペイパークリック広告出稿の最適化)、レコメンデーションエンジン(ユーザーに対してパーソナライズしたおすすめ情報を提供する仕組み)といったオンラインパフォーマンスマーケティングのお手伝いもしている」

 「JTBからは、特に旅館について多くを学ばせていただいている。日本の旅館は海外のホテルとはかなり異なる宿泊施設だ。日本旅館とは一体どういう体験ができる場所なのか、日本旅館ではどのように振る舞えばよいのか、またどんな食事が提供されるのか。これらの情報をインバウンド宿泊客に対して、最も正確に発信、提供できているグローバルOTAはアゴダだと自負している。これはJTBとの強いパートナーシップの賜物だ」

 ――アゴダは、JTBからインベントリー(宿泊在庫)の提供を受けている。サプライチェーンでもつながっている。

 「楽天、リクルート(じゃらん)からも在庫提供は受けているため、サプライチェーンの一部であり、重要な取引先だ」

 ――世界各国から日本への宿泊予約で旅館は伸びているのか。

 「アゴダでは、日本へのインバウンドの旅館の予約が最新の四半期で2019年の同時期の2倍となっている。JTBとパートナーシップを結ぶ前はもっと低かった。おそらく他のグローバルOTAよりも旅館比率が高いのではないだろうか」

 「グローバルな経験とローカライゼーションへの注力により、日本では他にも多くの戦略的パートナーとのユニークなパートナーシップを築くことができている。例えば、ANAワールドホテルウェブサイトをANAとともに運営し、ユーザーはANAマイルを貯めたり、マイルを使って日本や世界中のホテルやレンタカーを予約したりすることができる。」

 ――旅館の予約プロセスは、ホテルよりも複雑だ。この点は長らくグローバルOTAの弱点だった。

 「一般的にグローバルOTAは、できるだけ事前に宿泊者情報は聞きたくないと考えている。ユーザーが予約をする時に入力しなければならない情報が多いほど、面倒に感じて、離脱してしまう傾向があるからだ。ただ、1泊2食を提供している旅館側としては、お客さまの到着予定時間は必須項目だ。また男女の情報も浴衣などの準備のために必要だ。こういったことはJTBとの協業の中で学び、アゴダのプラットフォームに反映させてきた」

 ――各グローバルOTAの日本トップは、かつては基本的に外国人だったが、現在は全員が日本人だ。アゴダの場合は、楽天グループ出身の大尾嘉宏人氏が務めている。

 「完成したグローバルシステムをローカライズするより、ローカル市場に合致したシステムを最初から構築する方が効率的だ。アゴダでは、日本だけでなく、韓国、インドネシア、マレーシア等も現地化を徹底している。欧米でも国によって決済プラットフォームが異なっていたりするので、各現地事情に合わせたサイト展開をしている。各カントリーマネージャーがアゴダ本部にカスタマイズの要望を上げるのではなく、逆に本部の方からローカライズに必要な情報をカントリーマネージャーにヒアリングして、フロントエンドを構築している。他のグローバルOTAとはローカルへのアプローチが異なる」

 

 ダミエン・フィルシェ 仏のトゥールーズ・ビジネススクールでMBA(経営学、マーケティング)取得。メディア企業、トラベル企業等でディレクターを歴任。2012年、地域ディレクターとしてAgodaに入社。戦略的パートナーシップ&プログラム担当副社長、デスクトップ・モバイル・アプリを含むフロントエンド製品のイノベーション戦略担当副社長などを歴任。21年最高商務責任者(CCO)に就任。Agodaのパートナーシップ、キーアカウントを統括している。【聞き手・ankokeizai.com編集長 江口英一】

 
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