日本観光旅館連盟と国際観光旅館連盟は、21、22日に東京都内でそれぞれに開いた総会で新設合併契約に関する議案を承認し、10月1日に合併により新しい法人を設立することを決めた。新法人の名称は「一般社団法人日本旅館協会」。長年にわたる業界団体の再編問題が決着し、新法人は旅館・ホテル約3500軒を会員として旅館業のさらなる発展を目指す。設立から2年間の会長は体制固めのために両団体の会長が交互に就き、初年度は佐藤義正・国観連会長、次年度は近兼孝休・日観連会長が務める。
日観連と国観連の両会長は6日、一般社団法人に関する法律に基づいて新設合併契約書に調印。国観連は21日、日観連は22日、東京都内のホテルでそれぞれに今年度の通常総会を開き、新設合併契約書の締結を全会一致で承認した。
新法人の日本旅館協会は、英文名称が「JAPAN RYOKAN & HOTEL ASSOCIATION」。本部事務所は、東京都千代田区内神田にある日観連の現事務所に置く。
新設合併契約書には設立時の役員を記載する必要があることから、会長、副会長の就任予定者も決めた。初代会長となる佐藤国観連会長の任期が2013年6月の総会まで、次の会長の近兼日観連会長が14年6月の総会まで。初年度だけは「会長代行職」を置き、近兼日観連会長が就く。
副会長には10人が就任予定。国土交通省の地方運輸局の管轄に相当する9つの「支部連合会」から1人ずつと、ホテル業態を代表する1人に割り当てている。副会長は日観連、国観連の現副会長が半分ずつを占めるようになっている。
両団体の再編問題は、1989年5月に日観連が熊本市で開いた総会で緊急動議が提出されて以来、断続的に協議されてきた。06年11月には両団体が合併することに基本合意し正式発表したが、意見の相違が表面化して白紙に戻ってしまった。しかし、昨年の通常総会でそれぞれに合併を決議。一般社団法人への移行の遅れなどで当初計画した今年4月の新法人設立は間に合わなかったが、新法人の定款などを作成し新設合併契約の締結に至った。
総会であいさつした国観連の佐藤会長は、旅館の経営環境がバブル崩壊以降、厳しさを増したことに触れながらも、客室流通の構造改善やインバウンド振興への展望が開けてきたと語り、「旅館業に明るい未来が見えてきた。残るは会員の一致結束、会員の輪を広げることだ。それが日観連との合併の目的だ。国観連の灯を消してよいのか自問自答してきたが、時代は変わった。乾坤一擲。新法人でがんばろう」と述べた。
日観連の近兼会長も総会のあいさつで、両団体の歴史や合併協議の経緯に触れた上で、「合併問題は足かけ25年にわたって会員の心を惑わせ、紆余曲折があった。これまでは両団体がそれぞれの道を歩むことを時代が許してきたが、ともに会員数は減少している。この機を逃すことはできなかった。新しい法人をよい団体にできるという希望を持っているので、会員の協力をお願いしたい」と語った。
両団体は9月末で解散し、新法人の設立を内閣府に届け出る。それぞれの会員の地位は新法人に継承される。会費は、14年度からは客室数、業態に応じた新体系の会費に統一されるが、それまでの期間は旧加盟団体の会費が適用され、両団体に重複して加盟していた会員は国観連の会費額となる。
合併後の支部組織は、北海道、東北、関東、中部、北陸信越、近畿、中国、四国、九州の9地域単位で支部連合会を置く。新法人の設立に向けて各支部連合会の窓口も一本化への準備を進めている。
新法人の副会長 就任予定者
日観連と国観連の合併に伴い新設合併契約書に掲げた新法人設立時の副会長の就任予定者は次の通り(敬称略、カッコ内は宿泊施設名)。
三浦晃裕(ホテル三浦華園)、桑島繁行(知床グランドホテル北こぶし)、菅野豊(萩姫の湯栄楽館)、笹本森雄(常磐ホテル)、中村一(滝元館遊季の里)、萬谷正幸(瑠璃光)、西村肇(西村屋ホテル招月庭)、有本啓治(宮島グランドホテル有もと)、河内広志(道後プリンスホテル)、中原国男(温泉ホテル中原別荘)
日観連の懇親会で握手する近兼会長(左)と佐藤会長